この日、朝早く長靴の外で鳥達にエサをあげる5人のナッツ達。
鳥「ぴぃ、ぴぃ。」
ナッツ「おっ!卵産んだのか!」
鳥「ぴぃ!ぴぃ!」
ナッツ「ぴぃ!か…。ピィのやつら大丈夫かな。アップルも、皆んな帰ってこないね。」
ナッツ「うん…。」
ベビーリーフを見上げるナッツ達。
ナッツ「あいつらこんな小さな世界で生きてきたんだな…。」
ナッツ「ねぇ。今日の卵料理バームクーヘンにしよう。ノエル好きだったよね。」
ナッツ「うん。もし今日帰ってきたらノエル喜ぶね。ピィ達は何でもバカスカ食べるから良いだろう。」
アーモンド「皆ーーー!!ご飯よーーー!!」
アーモンドも声が聞こえる。
ナッツ「ご飯だ!行こうか!」
ナッツ達はアーモンドの所へ向かった。
一方その頃ピィ達と虫の子供達は木の枝を拾い集めていた。
マフィン「ねぇ!これで本当に家が作れるの?」
グミ「ぐぅ?」
ノエル「家というより屋根になるかも。枝があまり落ちてなさそうだから、家を作るのには足りない。」
ブラウニー「ぜぇぜぇ…。」
ピィ「ほら、ブラウニー頑張って!」
マフィン「もー!ブラウニーってば本当体力ないんだから!」
ブラウニー「ぜぇぜぇ…。な…なんで僕がこんな事しなきゃならないんだ…。」
その時、ブゥがあるものを見つけた。
ブゥ「ねぇ!あれ小麦じゃない?」
レェ「本当だ!マジかよ!」
グゥ「アーモンドさんとナッツさん達、長靴の外でも働いてるんですねぇ。」
ノエル「もしかしたら僕が子供の頃にもあったのかな?あの頃は何もわからなかったけど。」
ピィ「ナッツ達には悪いけどちょっとだけもらっちゃいましょ。マフィン、これでいろんなのが作れるわよ。バームクーヘンの材料にもなるし。」
マフィン「本当?!」
キィ「あとで収穫に来よう~。」
ガサガサ
レェ「ん?」
グゥ「どうしたんですかレェさん?」
レェ「いやなんか物音がした気がして…。それにさっきから誰かに見られてるような気がしたから…。」
ブゥ「ええええ!!怖いからやめてよー!」
キィ「やだ~、レェってば自意識過剰~。」
ピィ「そうよ。誰もあんたなんて見てないわよ。」
レェ「あんだと?!」
ノエル「とりあえず一旦住処に戻ろうか。荷物もあるし、休憩も兼ねて。」
マフィン「うん。」
グミ「ぐぅ。」
ブラウニー「…。」
住処に戻ってきたピィ達。
木の枝と枝を紐で結んで繋げる作業をする。
マフィン「できた!蝶々結び!」
ノエル「できた?よし次はもうちょっときつく結んでみようか。枝が崩れ落ちてきたら大変だからね。」
ピィ「良かったら友達も連れて来なさいよ。皆んなで作った方が楽しいし早く完成するわよ。」
マフィン「うん!」
グミ「ぐぅぅ。」
ブゥ「ここは陽当たりいい分雨も当たりやすいからね。」
ノエル「僕が子供の頃この辺り陽当たり悪かったんだけどな…。葉っぱの位置が変わったのかな。」
ピィ「あるいはこの上にアップルがいるか…。」
ブゥ「…うん…。アップルの声全然聞こえないね…。」
皆んなで作業をする中、黙々と本を読むブラウニー。
グゥ「ブラウニーくん、一緒にやりましょう?」
ブラウニー「結構です。」
マフィン「ほんっと付き合い悪いんだから!放っておきましょ!」
ノエル「ブラウニーくん、楽しいよ。皆んなでやろう。」
ブラウニーは本を読むのを一旦止める。
ブラウニー「…これがあなた達が土の上でやってきた事ですか?はっきり言ってつまらないです…。僕はもっと…凄い事をやりたいです。本を読んでる方が楽しいです。」
レェ「凄い事ってなんだよ?」
ブラウニー「例えば…僕は飛行木を作りたいです。小人が空を飛べるような道具を作りたいです。それで、今の長に認められたいです。」
キィ「へ~。」
ノエル「……。」
ピィ「そう思うのは別に良いんだけど、あんた蝶々結びできないでしょ?それでどうやって飛行木とかっての作るのよ。」
ブラウニー「それは…今考えてるとこです。」
そう言って再び本を読み始めるブラウニー。
困った表情のピィ達と、黙ってブラウニーを見つめるノエル。
マフィン「すごーい!!わーいわーい!」
グミ「ぐぅ!ぐぅ!」
屋根が途中まできあがり、マフィン達の友達が集まってきた。
ミルク「すご~い!これマフィンが作ったの?」
マフィン「そうよっ。」
クリープ「どうやって作ったんだ?」
マフィン「あのね…。」
屋根の下ではしゃぐ子供達を微笑ましそうに見つめるピィ達。
そこに虫の子供達がやってくる。
ミルク「ねえねえ。今度私にも蝶々結び教えて。」
クリープ「俺には屋根の作り方教えて!」
ピィ「良いわよっ。」
皆んなの楽しげな様子を、ブラウニーは遠くから見つめる。
ブラウニー「なんだよそんなもの…。飛行木に比べたら全然凄くないじゃないか…。僕の方がずっと凄いの作れるんだから…。」
ブラウニー「ふん…。」
そんなブラウニーの所へノエルがやってくる。
ノエル「ブラウニーくん、パンどうぞ。」
ブラウニー「…そこに置いといてください…。」
ノエルはブラウニーの隣に座る。
ノエル「このパン美味しいよね。小麦見たでしょ?あれから作るんだよ。凄いよね土って。ベビーリーフの葉っぱも小麦も、土から生まれてきたんだよ。」
ブラウニー「……。飛行木の方が凄いです…。」
ノエル「ブラウニーくんは何で飛行木を作りたいと思ったの?」
ブラウニー「小人が空を飛ぶ為です。言ったじゃないですか。」
ノエル「…長に認められたいんだっけ?僕も昔そうだったな…。」
ブラウニー「え?」
ノエル「今の長が太陽の妖精を捕まえたけど、僕も捕まえたかったんだ。…皆んなに凄いねって思われたかったんだ。僕は小人で、虫みたいに空も飛べないし、力もないし、何もできない生き物だったから…。太陽の妖精を捕まえて、皆んなを見返したかった。凄いね、かっこいいねって、思われたかった。」
ブラウニー「………。」
ノエル「こんな事考えるなんて、僕はなんて愚かな生き物なんだろうな…って思ったよ。」
ブラウニー「…愚かなってどういう意味ですか?」
ノエル「…僕もブラウニーくんと同じ生き物なんだよ。男の子だもん、皆んなより凄い生き物になりたいよね。」
ブラウニー「…。」
ノエル「僕は土の上でいろいろ学ぶ事ができた。だからベビーリーフに戻ったら皆んなにも土での生活の素晴らしさを教えたかったんだ。…でも少し押し付けがましかったかな。ごめんね。」
ブラウニー「いえ…。別に…。」
ノエル「でも飛行木を作る為には蝶々結びは覚えた方が良いと思うんだ。それに皆んなで身体を動かして、考えて、何かをするって意外と楽しいものだよ。」
ブラウニー「……わかりました…。蝶々結びだけですよ…。」
ノエル「本当?ありがとう。」
嬉しそうなノエル。
食事後、ブラウニーも一緒に屋根作りに参加する。
レェ「おっ。やっと来たかメガネ。」
ブラウニー「だからその呼び方辞めてください。」
マフィン「ブラウニーも早く手伝ってよ!」
グミ「ぐぅ、ぐぅ。」
ブゥ「ブラウニーくん器用そうだから、蝶々結びすぐに覚えそうだね。」
グゥ「そうですねぇ。」
クリープ「俺の方が早く覚えるもんね!」
キィ「負けるなブラウニ~!」
ブラウニー「は、はい。」
皆んなと一緒に屋根を作るブラウニー。
そんな様子をノエルはピィと一緒に遠くから微笑ましそうに見ていた。
ピィ「良かったわね。ブラウニー輪の中に入って。」
ノエル「うん。」
その頃、虫達の間で噂が広まっていた。
虫「お前のとこにも来たのか?小人と太った虫達。」
虫「あぁ。ベビーリーフの葉っぱは危ないから土に引っ越せとか。」
虫「私は枝を集めてるとこを見たわよ。虫の子供達と一緒に。」
虫「子供達と?何考えてんだ…。怪しいな…。」
第26話 バームクーヘン学校
おわり
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