アップルがいなくなった日の夕方。
小屋の外で焚き火をするピィ達。
レェ「戻って来なかったなあいつ。」
ブゥ「どうしちゃったんだろう…。」
アーモンド「きっと何かあったんだわ…。」
キィ「そうだよね。あたし達の事好きだったと思うもん。何も言わずにいなくならないよ。」
ノエル「…ベビーリーフを助けに行ったのかな…。」
レェ「え?」
ノエルは昨日のアップルとの出来事を話した。
グゥ「そうですか…。そんな事が…。」
ナッツ「じゃあしばらくしたら戻ってくんのかな?」
アーモンド「さぁ…。長靴の外に出て空を見てみたけど、不安定な天気だったわ。でも長靴の真上だけ晴れていたの。アップルが関係してるんだろうけど…。大丈夫かしら…。」
ナッツ「アップルいなくなったらここの食料や植物も育たないよね。朝顔だって…。」
黙り込む一同。
するとピィが。
ピィ「考えましょう。何か良い方法がないか。私達はこの長靴の中でいろいろな技や知識を身につけたんだから。アップルの帰りを待つより、その方が確実よ。」
ブゥ「アップルはどうするの?」
レェ「…このまま戻って来なかったとしても、朝顔育ててベビーリーフに行ったらきっと会えんだろ。」
ピィ「えぇ。確かめるためにも朝顔を育てなきゃ。」
ブゥ「…うん、そうだよね。」
レェとピィの言葉に頷くブゥ。
グゥ「長靴の入り口の方はアップルさんが外から照らしてくれています。きっと僕たちの為でしょう。長靴の入り口下で植物や食料を育てれば何とかなると思います。」
キィ「そうだね!そんでもってあたし達がまた葉っぱの上で寝れば補えるよ!」
ナッツ「あとはこの暗さと寒さどうにかならないかな。」
ピィ「私達がまた毛伸ばして服作ってあげるわよ。」
ナッツ「げっ。」
その時ノエルが閃く。
ノエル「あっ!髪!」
キィ「髪?」
ノエル「アップルの髪!ピィ達の毛と一緒にアップルも髪切ったよね?その髪はどこにあるの?」
アーモンド「!待ってね。確か袋に入れてあの道具箱の中に…。」
小屋の外に置いてある道具箱をあさり、小さな袋を取り出すアーモンド。
キィ「わぁ…光ってる。」
袋から出したアップルの毛は暖かく光っていた。
ノエル「これを支柱に結んだり、皆んなそれぞれ持ち歩いたら良いと思う。」
ピィ「ノエルやるじゃない!」
グゥ「ノエルくん凄いですぅ。」
ノエル「う、うん。」
少し照れるノエル。
レェ「じゃあさっそく分けようぜ。」
ピィ達は帽子の中に、アーモンド、ナッツ、ノエルはポケットにアップルの髪の毛を入れた。
アーモンドとナッツらを残し、ピィ達とノエルは余った髪の毛を持って支柱へ向かった。
ブゥ「髪の毛のおかげで明るいね。」
ピィ「本当ね。さ、支柱へ着いたわ。髪の毛を支柱に結びつけましょ。」
グゥ「身軽なアップルさんがいないと支柱を結ぶ作業も大変ですね。」
ピィ「仕方ないわ。私達だけで頑張りましょ。一応痩せたし、前よりは身軽に動けるわよ。」
ノエル「えっ。」
ピィ「ん?何?」
ノエル「いや、何でもない。」
レェ「『どこが?』て思ったんだろ?」
ノエル「ち、違うよ。」
葉っぱの上に乗り、支柱へ髪の毛を結ぶピィ達。
キィ「これでよしっと。」
すると、急に髪の毛の光が弱まり暗くなっていく。
キィ「わわっ!何?何?」
ブゥ「暗くて見えないよぅ。」
グゥ「これじゃ降りれませんねぇ。」
ピィ「アップルもしかして眠っちゃったのかしら。」
レェ「全く。タイミングの悪いやつだな。どこまでトラブルメーカーなんだ。」
ノエル「不思議だね。アップルが凄く近くにいるみたい。」
ピィ「そうね。今日はこのまま皆んなで葉っぱの上で寝ましょ。人数多い方が交代で支柱見張るの楽だし。」
キィ「いいね!皆んなで怖い話しようよー!」
ブゥ「ええっ!こ、怖い話?!」
レェ「おいくっつくなよ。」
葉っぱの上で夜を迎えるピィ達。
キィ「そして西に生えてる葉っぱからは生き物達はいなくなった…。」
ブゥ「もうやめてよー!」
レェ「あーもう!お前らうるさくて寝れねえよ!」
グゥ「ちょっと前にも葉っぱの上でアップルさんと怖い話してましたよねぇ。」
ノエル「アップル元気かな…。」
ピィ「一体何があったのかしらね…。」
レェ「声も聞こえねぇしな…。」
キィ「ねっ。そういえばさ、枝降ってくる事無くなったね。」
ピィ「言われてみればそうね…。もし枝がなくなったら代わりになる物探しましょ。」
ブゥ「朝顔が育ったらベビーリーフに戻れるんだね…。」
ノエル「皆んなはベビーリーフに帰るの?」
ピィ「ノエル…。もう気づいてるみたいだけど、ベビーリーフはもう長くないの。だから私達は新しい葉っぱを育てて、ベビーリーフの皆んなに引っ越してもらおうとしてたの。」
ノエル「…そっか。やっぱり…。」
悲しそうな表情を浮かべるノエル。
キィ「皆んなはベビーリーフの住民と一緒に新しい葉っぱに引っ越すの?」
ブゥ「どうしようかな…。」
ピィ「あらっ。最初の頃あんなに長靴から出たがってたのに。長靴に穴開けようと必死になってたじゃない。」
ブゥ「へへっ。最初はね。でも…今はなんだか土を離れるのが怖い。」
グゥ「…そうですねぇ。」
するとノエルが。
ノエル「僕は土の上で生きたい。」
キィ「え?そうなの?帰りたくないの?」
レェ「ベビーリーフの虐めっ子なら俺がぶっ飛ばしてやんぞ。」
ノエル「ううん。そうじゃない。新しい葉っぱで住んでも結局同じ事を繰り返すと思う。」
ピィ「そうね。葉っぱの上で生きてきた私達は、無知で愚かな生き物だったのよね…。」
レェ「そういう意味では俺らを土の上に呼んだあいつには感謝しねぇとな。」
ピィ「植物や食物を育てたり、木の枝で何かを作ったり、料理をしたり、土を掘って川っていうのを作ったり、歩きやすい道を作ったり、服を作ったり、他にもいろいろな事をしたわね。」
ノエル「そうやって皆んなで土の上で暮らしたい。だからベビーリーフに戻って、土での生活の事を皆んなに教えたい。」
グゥ「ノエルくん先生になるんですねぇ。」
ノエル「せんせい?」
グゥ「誰かに何かを教える生き物の事です。」
ノエル「ふーん。じゃあアーモンドとナッツ達とピィ達は先生だね。いろいろ教えてくれる。」
ピィ「ノエルはベビーリーフの先生になるのね。」
ノエル「うん、なりたい。」
キィ「そっかー。皆んなが土の上で暮らすならあたしもそうしよ。」
レェ「なんだよそれ。」
キィ「皆んなと一緒にいるの楽しいもん♪」
ピィ「あら、私もよ!でも私も一旦ベビーリーフに戻るわ。ノエルと同じで友達を置いてきたの。きっと心配してるわ。」
ノエル「……あっ!」
ピィの言葉に、ノエルはある言葉を思い出した。
ノエル「ピンクの太った生き物って…カブトムシのお兄ちゃんが探してた…!もしかして、ピィの事?」
ピィ「カブトムシって、クッキーに会ったの?」
ノエル「名前はわからないけど…。」
キィ「ピンクの太った生き物なら間違いなくピィだね。」
ピィ「失敬な!クッキーだって服パツパツよ。…そっか…クッキー…心配かけてごめんね。」
ノエル「早く朝顔育ててベビーリーフに戻ろう。僕もボネに会いたい。土の事…教えたい事たくさんある。」
グゥ「そうですねぇ。…あの小人の女の子はどうしてるかなぁ。」
レェ「なぁそろそろ寝ようぜ。俺もう目が開かなくなってきた。」
キィ「結局怖い話ちょっとしかできなかったなー。」
ブゥ「もぅ良いよぅ。」
ノエル「ねぇ。この長靴の世界は何て言うの?」
ピィ「え?」
ノエル「葉っぱの世界はベビーリーフで、この長靴の世界は何て名前なの?」
レェ「長靴は長靴だろ。」
キィ「えっとねー。『フェアリーホイップ』だよ。」
レェ「っておい。」
ピィ「そうね。名前があっても良いわよね。」
キィ「じゃあフェアリーホイップに決まりね!」
レェ「まーたナッツ達にダサいダサい言われっぞ。」
ピィ「さっ!そろそろマジで寝ましょ。」
こうしてピィ達は支柱の見張りも忘れて深い眠りについた。
第19話 ノエルの夢
おわり
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