マカロン 第11話 小さな勇者

絵本『マカロン』

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ベビーリーフの住民「今日も雨が降りそうな天気だな。」

住民「本当…困ったねぇ。葉っぱは少なくなるばかり…。ポテヂィの長はいったいどうする気なのかね。」

この日、わずかな小人達が暮らすベビーリーフの端に、長に仕える1匹の昆虫がやってきた。

昆虫「今日は長から話があって来た。」

騒つく小人達。

「長…?」

「長ってまだポテヂィだよね‥?」

「なんだろう…。」

「‥俺たちをまた隅っこに追いやられるのかな‥。」

昆虫「最近続くこの悪天候は、太陽の妖精がいなくなったからだと思われる。」

ノエル「太陽の妖精…?」

昆虫「太陽の妖精は葉を育てる力を持っているらしい。太陽の妖精がいれば、葉は増え、土地や食料の奪い合いもなくなるだろう。」

小人達「……。」

昆虫「そこで、太陽の妖精を見つけ出し、捕獲する事をベビーリーフの住民達に呼びかけている。太陽の妖精を捕獲した者は、ベビーリーフの危機を救った英雄として、次期長に任命する。」

小人「私達小人でも長になれるんですか?」

昆虫「ベビーリーフの危機がかかってるんだ。協力しようじゃないか。それにポテヂィももう歳だ。そろそろ後継者を決めないといけない。」

小人「わかりました。」

昆虫「……。」

小人の素っ気ない返事に、昆虫は顔を顰め帰っていった。

昆虫が帰った後、ボネの所へ向かうノエル。

ノエル「ボネただいま!具合は大丈夫?」

ボネはこの日風邪をひいて寝込んでいた。

ボネ「寒い…。ごほっごほっ。」

ノエル「まだおでこ熱いね。そろそろ冬が来るからなぁ。もっと葉っぱや服が欲しいね。」

ボネ「うん。ごほっごほっ。」

ノエル「ねえボネ。さっき昆虫が言ってたんだけどさ。太陽の妖精を捕まえたら次の長になれるんだって!長になれば葉っぱ沢山手に入るし、広い所に住めね。風邪治ったら一緒に捕まえに行こう。」

ボネ「ごほっごほっ。本当?!僕太陽の妖精見たことあるよ!」

ノエル「え!そうなの?どんな生き物なの?」

ボネ「うんとね。夜に見たんだけどね。夜でも太陽みたいに光ってて、暖かい光だったよ。光の中に黒い影が見えて、すーっと動いてた。」

ノエル「へ~。そうなんだ~。あ、ボネ、その事内緒ね。」

ボネ「なんで?」

ノエル「他の小人に先越されちゃうかもしれないじゃん。だから内緒ね。」

ボネ「うん。そうだね。ごほっごほっ。」

ノエル「ボネもう一回寝て。僕葉っぱ探してくるから。」

ボネ「ダメだよ。僕たちここより上の葉っぱに行ったら怒られる。」

ノエル「大丈夫!」

そう言ってノエルは去っていった。
そしてある所へ向かう。

クモの少年「あれ?ノエル!何しに来たんだ?!小人はここに来ちゃダメなんだぞ!」

クモの少年は服を作っていた。

ノエル「キャンディお願いがあるんだ。ボネが風邪をひいちゃって、服を作って欲しいんだ。」

キャンディ「葉っぱ持ってるのか?葉っぱ5枚からじゃないと作らないぞ。」

ノエル「持ってない。けど…。」

キャンディ「はあ?なら帰れ帰れ!まあどっちみち小人に売る服なんてねえけどな!」

ノエル「持ってないけど、洋服作るの手伝うから…。お願い。」

キャンディ「ダメダメ。お前作った事ねえだろ。葉っぱも持たない小人は黙って今の服で我慢しな。」

ノエル「このままじゃ寒くて太陽の妖精も探しにいけないし…。」

キャンディ「太陽の妖精?なんだそれ?」

ノエル「聞いてないの?太陽の妖精がいれば葉っぱが増えるから、捕まえた人に次の長をやらせるって。」

キャンディ「知らねえよそんな話。お前また嘘ついてんだろ?」

ノエル「嘘じゃないよ!さっきポテヂィのとこの昆虫が来て言ってたもん!太陽の妖精を捕まえるようベビーリーフの住民に呼びかけてるって。キャンディのとこにはまだ来てないだけだよきっと!」

するとその時。

クッキー「おい。」

キャンディ「げっ!」

ノエル「あ、あの時助けてくれた…。」

キャンディとノエルの前にクッキーが現れた。

クッキー「お前…騙されてるよ。俺ら昆虫はそんな話聞いてない。それに次の長はもう決まってる。」

ノエル「え…。小人にだけ言ったの?」

クッキー「葉っぱの争奪で一番不利なのは小人だからな。その弱味につけこんで危険な仕事やらせようって事だろう。」

ノエル「危険な仕事…?でも僕例え長になれなくても葉っぱさえ増えてくれればそれでいい。葉っぱが増えれば皆んな幸せになれる。だから…。」

クッキー「あのな…もっと賢くなれ。お前達小人は特別な能力がない…。だからこそ賢くならないとこの葉っぱの上でじゃ生きていけない。お前はいい子だと思う。でもそれだけじゃずるいやつに利用される。この前昆虫達が太陽の妖精を捕まえようとして怪我をしたらしい。俺が探してるやつ以外にも行方不明者がいて、太陽の妖精がいなくなった時期と被ってるんだ。何か関係があるかもしれない。そんな危険な仕事になんて手を出さないで、友達の所に帰ってやれ。もう日が暮れる。風邪ひいてるんだろ?」

ノエル「…………。」

ノエルはショックを受けた表情で、その場から立ち去った。

ノエル「……そうだ、葉っぱだ…。ボネに…葉っぱ…持ち帰らないと…。」

途方に暮れながら歩くノエル。

ノエル「なんだ…利用されてたんだ…。結局小人は幸せになっちゃダメって事…?他の小人達はわかってたんだ…。ははっ。僕だけ恥ずかしー…。またキャンディ達にバカにされるなー…。」

その時、足を滑らせ転げ落ちるノエル。

ノエル「わあああああ!」

大きな葉っぱの上で倒れこむ。

ノエル「……ぅ、うぅ…。誰か…誰か…助けて……。」

ゆっくり起き上がったノエルの目にある物が飛び込んできた。

それは、マカロン達が落ちた長靴だった。

ボネとクッキーの言葉が頭をよぎる。

ボネ『夜でも太陽みたいに光ってて、暖かい光だったよ。』

クッキー『昆虫達が太陽の妖精を捕まえようとして怪我をしたらしい。』

ボネとクッキーの言葉を思い出しながら、ノエルはその光に心奪われていた。

第11話 小さな勇者
おわり

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