星のティコ 第1話 星の舞踊会

絵本『星のティコ』

流れ星が光る。

窓から夜空を見上げる一人の人物がいた。

「流れ星…。どうか…どうかお願い…。」

ここは『星の界』。

夜空に輝く星の世界である。

星たちは今日も空から生き物達を見守っていた。

星たち「見守ってるよ~~♪」

この日、一部の星たちは合唱の練習をしていた。

プロキオン「よし!今日の練習はここまで!」

指揮をしていた子犬の名前はプロキオン。

トナ「やっと終わった~。」

ミザール「喉カラカラだわ~。」

キリンの名前はトナ。大きなクマはミザールという。

トナ「ティコ、もうちょっと大きな声出せない?」

ティコ「え…。あ…。ごめん…。」

小さな声で答える少年の名前はティコ。

ミザール「お腹から声を出すのよ!お腹から!」

ティコ「え、えっと…。お腹から…?」

プロキオン「ティコ、あとで一緒に練習しよ!」

ティコ「う、うん…。」

ミザール「あぁ、舞踊会楽しみだわ~。」

トナ「皆喜んでくれるといいね。」

ティコたちは、近づく舞踊会『希望の祭典』の合唱組である。

全ての星たちが集まって歌や踊りを披露し、地上の生き物たちに希望を与えるお祭りだ。

その時ー。

「オーーーホッホッホッホッ!!」

遠くから突然笑い声が聞こえる。

笑い声の先には美しいペガサスの姿が。

プロキオン「ミュー!」

ペガサスの名前はミュー。

トナ「お前また踊りの練習サボってるのか?」

ミュー「あーら!私は練習しなくったって美しく踊れるもの。それよりあなたたち合唱組の方が心配だわ。毎日練習してるわりに、聞くに堪えない歌声ね。」

プロキオン「なんだって!」

ミュー「誰かさんにいたっては歌声すら聞こえないわ。」

小馬鹿にした目でティコを見るミュー。

ミューの視線にビクッとするティコ。

ミザール「ティコ、言い返してやりなさい。」

ミュー「言い返したってどうせ聞こえないわよ。オーホッホッホッ!」

ミューはそう言い飛び立っていった。

プロキオン「何なんだあいつ!大雨降って厚化粧落ちてしまえ!」

トナ「見返してやろう皆!」

ミザール「全くだわ。」

トナとミザールと別れ、プロキオンと2人になったティコ。

プロキオン「ティコ、歌うの恥ずかしい?」

ティコ「うん…。それに僕歌下手だから…。」

プロキオン「そんな事ないって!ちゃんと音あってるし、優しい歌声だよ!自信持って!」

プロキオンは町を見下ろす。

プロキオン「ティコ聞こえる?生き物たちの声。」

ティコは目をつぶって耳を傾ける。

ティコ「うん。皆の願い、聞こえる。明日の試験上手くいきますように…。ケーキ屋さんになれますように…。今年こそデビューできますように…。高級な餌が食べたい…。他にも沢山聞こえる。」

プロキオン「そう、大事なのは気持ちだよ。上手い下手じゃない。これは皆に希望を与えるお祭りなんだ。皆に届くように歌わなきゃ意味がない。」

ティコ「…う、うんっ。」

プロキオンの言葉に勇気づけられるティコ。

プロキオン「あ、そうだ!歌を届けたい人を思い浮かべればいいんだ!そうすればきっと力強く歌えるって!誰かいないの?ティコにとって特別な人。」

ティコ「特別な…。」

ティコはある女性の姿を思い浮かべた。

その時。

ベガ「あら、プロキオンにティコ。」

プロキオン「ベガ、こんばんは。」

ティコ「こ、こんばんは…。」

プロキオンの後ろにサッと隠れるティコ。

白銀の髪の女性の名前はベガ。

ベガ「合唱の練習は終わったの?」

プロキオン「うん。ねぇ聞いてよベガ。ミューのやつまーた練習サボってたんだ。しかも僕たち合唱組の歌バカにしたんだよ。ね、ティコ。」

ティコ「う、うん…。」

ベガ「はぁ…。困った子ね。いいわ、私の方から注意しておく。」

プロキオン「ありがとう。僕たちが言っても全然言うこと聞かないんだ。それにしてもベガ珍しいね。いつもこの時間琴の練習してるのに。」

ベガ「そう、それが…。どうも琴立をなくしたみたいで…。」

プロキオン「えっ!!」

ティコ「そんな…。まさかベガが琴立をなくすなんて……。」

ベガ「あら、私だってなくし物くらいするわよ。」

ティコ「あ…。ご、ごめん…。」

プロキオン「心当たりはないの?」

ベガ「昨日風が強かったでしょう?もしかして風で飛ばされたのかと思って探してたんだけど見つからないの…。」

プロキオン「大変!早く見つけなきゃ練習もできないし、舞踊会本番に間に合わなくなっちゃう!」

ティコ「ぼ、僕も探すよ。」

ベガ「ありがとう。でも…これだけ探しても見つからないなら…。考えたくはないけど、人間界に落ちてしまったんじゃないかしら…。」

ティコ「に、人間界に?」

プロキオン「ありえる!昨日ミューもつけまつ毛落としたー!って練習サボって騒いでたし。」

ベガ「とにかく私はもうちょっとこの辺りを探してみるわ。」

プロキオン「もし見つからなかったら?」

ベガ「その時は…。あきらめるしかないわね…。」

ベガは少しさみし気な表情でその場から去っていった。

ティコ「そんな…。ベガ、舞踊会あんなに張り切ってたのに…。」

プロキオン「でも、もし人間界に落としちゃったんならどうしようもないよね。」

その時、ティコの顔つきが変わった。

ティコ「僕…。人間界に行って探してこようかな…。」

プロキオン「え!!何言ってんの!!急に!!」

ティコ「だって…このままじゃベガ可哀想だよ…。あんなに練習頑張ってたのに…。皆に希望を与えるんだって…。それに…それに…。」

プロキオン「ティコ…。もしかしてベガのこと…。」

ティコ「…!ちちち違うよ!そんなんじゃないよ!僕なんかがベガに相手にされるわけないし!」

顔を真っ赤にして慌てるティコ。

そんなティコに抱きつくプロキオン。

プロキオン「いいんだ、いいんだティコ!恥ずかしがらなくて!僕嬉しいんだ。ティコが自分から何かしたいって言うなんて。」

ティコ「プロキオン…。」

プロキオン「それなら僕も一緒に人間界に行くよ!一人じゃ心細いでしょ?」

ティコ「本当?ありがとう…!」

プロキオン「目指すは星に一番近い街『コンフェイト』だ!」

思いを寄せるベガのため、ティコとプロキオンは翼を広げ、人間界へ飛び立った。

第1話 星の舞踊会
おわり

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