◆前回のあらすじ◆
ティコは想いを寄せるベガの為に、琴立を探しに地上へ行く。
やってきたのは星に一番近い街コンフェイト。探索を続ける中、言葉を喋るプロキオンがピンチになりロアンに助けられる。ティコ達はロアンから「この街の町長は珍しいものが好きだから、早く出て行った方がいい。」と忠告を受ける。
ティコとプロキオンと別れたロアンは屋敷へ入る。
ロアン「通路の掃除終わりました。」
眼鏡の女性「あらロアンちゃんご苦労様。」
ほくろの女性「お疲れ様。」
屋敷の受付の2人の女性が出迎える。
眼鏡の女性「ねえロアンちゃん。琴立どこかに落ちてなかった?」
ロアン「琴立?」
ほくろの女性「さっき来た男の子が探してたのよ。外で会わなかった?犬を連れた子なんだけど。」
ロアン「いえ……。見てないです。」
眼鏡の女性「そっかあ。」
ほくろの女性「なんか変わった子だったわね。挙動不審で。」
眼鏡の女性「ねぇ。変わった服着て。どこの観光客かしら。」
ロアン「……。」
2人の話を無言で聞くロアン。
ほくろの女性「変わってるといえば、昨日の流れ星見てまーた町長が騒いでたわよ。何か珍しいものが降ってきたかもーって。」
眼鏡の女性「えーまたあ?昨日もそう言って一日かけて拾いにいって、見つかったのは変な毛束だったじゃない。」
ほくろの女性「そんな暇あったら仕事しろっての。今日だって観光客さっぱりよ。どうすんだか。」
町長「あー、ゴホン。」
2人の女性の前に町長が現れる。
眼鏡の女性「ちょ、町長。」
ほくろの女性「あ、あらやだ。びっくりさせないでくださいよ突然。」
町長「君たち頼んでた書類は終わったかね?」
眼鏡の女性「あ、はい…もうちょっとで終わります。」
町長「それとさっき話してた変わった子ってどんな子?琴立がどうとか…。」
ほくろの女性「あぁそれが…。」
ロアン「…。」
ロアンは黙ってその場から立ち去った。
町長「ふーん。琴立を探してる変わった服の子かあ…。」
町長は自分の部屋で書類を眺めながらつぶやく。
町長「はぁ…。今月も観光客右肩下がりか…。やれることはやってるんだけどなぁ…。星に一番近い街ってのだけで売っていくのはもう限界なのかな…。」
町長は机にうつぶせになり思い悩む。
町長「あいつは亡くなってしまったし、何か…何か手を打たないと…。はぁ…。こんな毛束じゃなくてもっと何か凄いの降ってこないかな…。」
外は暗くなり始めていた。
仕事を終え、屋敷から出るロアン。
家へ帰る途中、広場のベンチへ目をやるとそこにはティコとプロキオンの姿が。
ロアン「あ…。」
プロキオン「やあ!昼間の子!」
ティコ「こ、こんばんは…。」
ロアン「何やってんだそんなとこで。てか外で喋るなよ。」
プロキオン「まあまあ。僕たち琴立を探してるんだけど見つからなくてね…。君知らない?」
ロアン「知らない。」
ロアンはそっけない態度でその場から立ち去ろうとする。
ティコ「へ…へっくしゅっ!」
プロキオン「た、大変だティコ。大丈夫?熱あるんじゃない?」
プロキオンはロアンの方をチラッと見る。
プロキオン「こんな状態で野宿なんてしたら倒れちゃうよ。どうしよう。」
ロアン「…昼にあんた達が行った屋敷、宿にもなってるからそこで泊まりなよ。」
プロキオン「…僕たちお金がないんだ。」
ロアン「そうか。それなら野宿しかないね。せいぜい身体壊さないようにね。」
プロキオン「ちょっと待ってよ!そりゃないだろう。」
ロアン「お金持ってないあんた達が悪いんだろ。」
プロキオン「ね、頼む!一日だけ泊めてくれないか?」
ロアン「はぁ?何であたしの家に?」
プロキオン「ティコが風邪引いたら困るんだ。僕たち大事なイベントが控えてるんだ。頼む!この通り!」
ロアン「あたしには関係ないね。それに、そいつは嫌そうにしてるじゃん。」
ロアンはティコの方を見る。
ティコ「え…。あ…えっと…。」
プロキオン「ティコ、いいのか?風邪引いたら祭典で声が出なくなるぞ。」
ティコはベガの事を思い出す。
ティコ「ベガ…。」
ティコは恐る恐る小さな声でロアンに言う。
ティコ「お、お願いします…。泊めてください…。な、なんでもします…。」
ロアンはティコの言葉に軽くため息をつく。
ロアンの家に一緒に向かうティコ達。
プロキオン「ありがとう。君ツンツンしてるけど本当は優しいよね。」
ロアン「うるさい。野宿させるぞ。」
ロアンの家に辿り着く。
ロアンの家はコンフェイトの中では大きな方だった。
ロアンが鍵を開け中へ入ると、部屋は真っ暗だった。
ロアン「そこで待ってな。」
ロアンは部屋の電気をつける。
部屋の辺りを見渡すティコとプロキオン。
部屋にはいくつかの長椅子。
カウンターの奥の棚には薬品がびっしりと置いてある。
ティコ「病院…?」
プロキオン「っぽいね。君の親医者なの?」
ロアン「…。」
ロアンのは部屋から出て、毛布を持って来た。
ロアン「その長椅子で寝な。いいか?この部屋から先には絶対に入るなよ。」
プロキオン「もちろん!泊めてくれるだけで十分だよ。」
プロキオンの言葉に賛同するように頷くティコ。
プロキオン「君、お父さんとお母さんは?僕たち勝手に泊めて大丈夫?」
ロアン「いないよ。」
ティコ「え…。」
ロアンはそれ以上何も言わず部屋から出て行った。
夜になり、2人で毛布にくるまるティコとプロキオン。
ティコ「琴立見つからなかったね…。」
プロキオン「この街から匂いはするんだけどなあ。…あ、そろそろ祭典の練習時間だ。ミザールとトナに何も言わずに来ちゃったな。」
ティコ「……。」
プロキオン「ティコどうしたの?」
ティコ「あのロアンって子…。お父さんとお母さんいなくて寂しいだろうなと思って…。」
プロキオン「今日留守なだけじゃない?」
ティコ「ううん…。そんな感じじゃないように見えた…。」
プロキオン「そう?あれ?もしかして気になる?ベガはどうしたベガは。」
ニヤニヤするプロキオン。
ティコ「そ、そんなんじゃないよ。」
プロキオン「そういえばティコってベガのどこが好きなの?」
ティコ「え、ええ!何急に!」
プロキオン「やっぱ顔?トナもベガの事綺麗だよな~て言ってたし。」
ティコ「え、え、そうなの?はぁ…。やっぱりベガもてるんだ…。」
プロキオン「綺麗って言ってただけで好きとかじゃないと思うよ。」
ティコ「そ、そうかな…。ベガってみんなの憧れって感じだし…。綺麗なのに気取ってなくて、何事にも全力で、1人で何でもできちゃって、みんなを引っ張っていって…。僕が輪に入れないでいた時も沢山話しかけてくれて、みんなの中に入りやすいようにしてくれて…。」
プロキオン「ごちそうさま。」
ふふっと笑うプロキオン。
ティコ「そういえば…ベガなんで…。」
プロキオン「ん?」
ティコ「いや、たいした事じゃないんだけど…。…あ、そうだプロキオン。歌の練習付き合ってもらっていい?」
プロキオン「いいよ!愛するベガの為に頑張って歌わなきゃね。」
ティコ「へへっ…。あ、でもロアンが起きちゃうから、小さな声でしか歌えないけど。」
プロキオン「そうだね。」
小さな声で歌い出すティコ。
ティコ達がいる部屋の扉の前で、ロアンはその歌を心地よく聞いていた。
第3話 コンフェイトの人々
おわり
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