星のティコ 第11話 星達への復讐

絵本『星のティコ』

◆前回のあらすじ◆

町長の屋敷の地下室にやって来たティコとロアン。

牢屋に閉じ込められたプロキオンを助ける為、ロアンは鍵を探しに単独行動に出るが町長に見つかってしまう。そしてティコも町長に見つかりそうになるが、間一髪でベガに救出される。

ティコ「ベガ…どうしてここに?」

ベガ「琴立を探しに来たのよ。」

ティコ「琴立を?」

ベガ「ええ。強風に煽られて、着地に失敗しちゃってね。ロアンの家の前で倒れていたところをあの子に助けられたの。」


ティコ「え…、ロアンに…?」

ベガ「目が覚めてすぐに琴立を探しに行こうと飛び立とうとしたら、ロアンに『それじゃ目立って町長に捕まる』って怒られちゃった。それからずっとあの子の家に匿われていたの。ティコ達が家に来たのにはびっくりしたわ。」

ティコ「あ…!あの時ベガいたんだ…。」


ベガ「その時は気づかなかったけど、後でロアンに話を聞いてね。琴立を狙う変な奴らが来たーって。事情を全部話してもなかなか信じてもらえなかったけど。まあ無理もないわね。そして昨日の夜、ロアンが元気なかったからなんだか気になって、家を飛び出してついてきちゃった。そんでなんやかんやしてたらここに行きついちゃったってわけ。」


ティコ「そ、そうなんだ…。…あ!こ、これ……。」

ティコはベガに琴立を差し出す。


ベガ「…見つけてくれたのね。ありがとう!」


優しく嬉しそうに笑うベガ。

ベガの笑顔に喜びを噛みしめるティコ。

ティコ「で、でも…僕必要なかったかな。」
ベガ「何が?」

ティコ「ベガは一人で何でもできちゃうもん。僕はプロキオンについてきてもらったけど、ベガなら一人で地上に行くだろうなって思ったんだ。僕がわざわざ行く必要はなかったかもって。」

ベガ「何言ってるのよ!私だって一人で来るの不安だったわよ!それより、私が琴立をなくしたって誰から聞いたの?」

ティコ「え…?ベガが僕たちに話したじゃん…?」

ベガ「言ってないわよ。だって私なくしたの知ってすぐに地上に向かったもの。」

ティコ「あ、あれ…?どういうこと…?」

その頃、星の界では舞踊会本番への準備が始まっていた。

トナ「ああ…緊張してきた…。この衣装何だかサイズでかいな。確かブローチなかったっけ。…て、ベガーー!どう?僕の衣装!」


通りかかったベガに声を掛けるトナ。

ベガ「あら、トナ。」

トナ「えっっっ?!」

振り返ったベガの顔にびっくりするトナ。

トナ「ベ、ベガ…な、な、何だか変わった化粧だね。あ、いやでも個性的でいいと思うよ。」


ミザール「あ、いたいた。トナー!ブローチ落っこちてたわよー!…て。え…?ベ、ベガ?!ど、どうしたのよその化粧!」

ベガ「んん?」

鏡を見るベガ。

ベガ「し、しまった!顔変えるの忘れてた!」

ミザール「あんた…ベガじゃないわね。」

トナ「ええ、そうなの?」

ミザール「いろいろおかしいと思った!」


ベガに化けた生き物は、カメレオンの姿へと変わっていく。

アルファー「ふん!ばれたなら仕方ない。まあいい。どっちみち舞踊会はもうめちゃくちゃだからな。」


トナ「あ!お前確かカメレオンのアルファー!」

一方、ベガから詳しい事情を聞くティコ。

ティコ「カメレオンのアルファーが…?」


ベガ「ええ、同じ楽器組なんだけど。彼から私の琴立が風で地上へ飛ばされたって聞いたの。」

ティコ「アルファーって、確か姿そっくりに変身できるんだよね?じゃあ、僕とプロキオンに琴立の話をしたのは…。」

ベガ「あまり考えたくはないけど…。でももしそうなら一体何のために…?」


ミザール「あんた!ベガに化けて何したの!?」


トナ「そうだよ!舞踊会めちゃくちゃにしてどうするのさ!」

アルファー「ふん!これはお前ら星への復讐だ!」


ミザール「復讐ですって?!」

アルファー「そうだ!コンフェイトに隕石を落としたこの世界へのな!」

トナ「そ、そんなの言いがかりだよ。僕たちのせいじゃないよ!」

アルファー「うるさい!コンフェイトが酷い目にあったっていうのに、お前ら星達はのうのうと舞踊会を楽しみやがって!偉そうにしきってたベガの琴立を地上へぶん投げてやったのさ!ついでにベガに鼻の下伸ばしていた馬鹿共も地上へ送ってやったよ!もう舞踊会には間に合わないだろうな!ざまあみろ!」


ミザール「な、なんてこと…。」

その頃、プロキオンとミューは…。

ミュー「あー…疲れた…。大声出し続けて喉痛いわ…。」

プロキオン「くそぅ…。このままじゃ舞踊会が始まってしまう…。」

ミュー「冗談じゃないわ…。この日の為にどれだけ練習してきたと思ってるのよ…!まさか…まさかこんな事になるなんて…。」


プロキオン「泣くなよ…。泣きたいのは僕だって一緒さ。それにお前はほとんどサボってたじゃないか。」

ミュー「今頃着付けの時間だわ…。私の美しい晴れ姿が…。髪も毛も羽もボサボサ…。どうしてくれるの…。」

プロキオン「羽…。」

ミューの羽を見つめるプロキオン。

プロキオン「……そうだ!!」

夜を迎えたコンフェイト。

見慣れぬ民族衣装の観光客で、街はいつもと違う顔を見せる。

眼鏡の女性「凄い観光客ね。皆あのポスター見て来たのかしら。」

リビアン「ねー!だからリビアン言ったでしょ!あの犬喋るって。」


騒がしい街の様子を見て緊張する町長。

町長「う~~!こんなに街が賑やかなのは何年ぶりだろう…!はあ…緊張してきた。さて準備に入るか。」

プロキオンとミューのいる牢屋へ向かう町長。


町長「羽の生えた少年は逃したけど、まあいい。そんなのコスプレかなんかだろっていちゃもんつけられるかもしれないしな。客受けはあの馬と犬の方が良いだろうきっと。おい!お前達出番だぞ!」

牢屋のある部屋の扉を開ける町長。

しかし…。

町長「…い、いない……?」

第11話 星達への復讐

おわり

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