星のティコ 第5話 憧れの友達

絵本『星のティコ』

◆前回のあらすじ◆
街で琴立を探すティコ達。
昔コンフェイトに隕石が落ち、街の大半と多くの住民が亡くなった事を知る。
ロアンの父親もその犠牲者の一人だった。そして事故の後、ロアンの母も病気で他界してしまった。

琴立を探しコンフェイトの探索を続けるティコとプロキオン。

町民「そうそう、朝早く走っていったわよ。」

町民「町長が?」

町民「なんか凄いの手に入れた~とかって。」

町民たちの会話に足を止めるティコ。

町民「キラキラ綺麗に輝くものとかなんとか。」

ティコ・プロキオン「!!」

町民「でもあの町長結構ガラクタ拾ってくるからねえ。」

プロキオン「ティコ!詳しく話を聞いてみよう!」

ティコ「あ…、でも…キラキラ光るものなんていっぱいあるし…。」

プロキオン「違ったとしても聞いてみよう!」

ティコ「う…。えっと…。」

町民「あらもうこんな時間!」

町民「あらやだ本当。やーねー。早く家事終わらせないと。町長の話になると止まらなくなるわ。オホホ。」

町民たちは家へと入っていった。

プロキオン「あ~もう。行っちゃった。」

ティコ「あ…。ご、ごめん…。」

プロキオン「まあいっか…。確かにベガの琴立は綺麗だけど、珍しいものかって言われると微妙なとこだし。」

ティコ「う、うん…。」

プロキオン「あ!そうだ!また町長の屋敷に行ってみない?その珍しいもの直接見せてもらおうよ!」

ティコ「え!えぇ…。でも…。」

プロキオン「ティコ~、そんなんじゃいつまで経っても見つからないよ?」

ティコ「う…うん…。そうだけど…。」

プロキオン「はい決まり!」

ティコ「…?」

プロキオン「ん?どうしたの?」

ティコ「あ…。いや…何でもない…。」

町長の屋敷にやって来たティコとプロキオン。

プロキオン「さっ!入ろうか!」

ティコ「…。」

石のように硬直するティコ。

プロキオン「ティコ!しっかり!」

ティコ「な、何て言って入ろう…。」

プロキオン「そんな難しく考えなくていいよ。珍しいもの拾ったって聞いたから見せて~でいいんじゃない?」

ティコ「そ、そうか。」

するとその時。

町長「君、ここで何してるんだ?うちに何か用かい?」

ティコ「わ!」

町長「あれ?もう一人話し声が聞こえた気がしたんだけど気のせいかな。」

ティコ「き、気のせいです。」

町長「いや~。確かに聞こえた。…君、もしかして独り言言ってたの?」

ティコ「あ…えっと…。はい…。」

町長「はあ~…。わかるよ、独り言言いたくなる気持ち。きっと疲れてるんだ。君もまだ若いのに苦労してるんだね。」

ティコの服を引っ張り目配りするプロキオン。

ティコ「あっ、えっと…。め、珍しいもの見せてください。」

町長「ん、珍しいもの?なんだね急に。」

ティコ「えっと…、何だっけ…。」

プロキオン(ティコ~…。)

町長「あ!!さては君!私が手に入れた珍しいものを横取りする気だな!」

ティコ「あ…、えっと…、それは…。」

町長「やっぱり!ダメダメ!あれだけは絶対渡さん!見せるのもやなっこった!さ!帰った帰った!」

屋敷に入ろうとする町長。

ティコ「あ…、あ…。」

すると、痺れを切らしたプロキオンが…。

プロキオン「ちょっと待ってください!!」

町長「んん??」

ティコ「プロキオン…!」

プロキオン「僕たちキラキラ輝く琴立を探してるんです!僕たちの友達の大切なものなんです!もし持ってるんだったったら返してください!」

町長「い、犬が喋った…。」

固まる町長。

ティコ「プロキオン…いいの?」

プロキオン「だって、この調子じゃ祭典に間に合わないよ!」

町長「そ…その…。琴立とかってのは持ってないよ。別に珍しくもないし…。それより何でその犬喋るんだ…?」

プロキオン「持ってないなら失礼します!」

その場を立ち去るプロキオン。ティコも後を追って去っていく。

町長「す、凄い…。どうしたんだ…。とてもついてる…。星に願い続けた甲斐があったー…!」

二人きりになったティコとプロキオン。

ティコ「プロキオンいいの?ばれちゃって…。」

プロキオン「ティコ、もっと積極的に動かなきゃ見つからないよ?!」

ティコ「あ、ごめん…。」

プロキオン「僕今回指揮者だし、早く見つけて練習に戻りたいよ。」

ティコ「う…うん。ごめん…。」

空が暗くなり始める。

街の階段で座って休むティコとプロキオン。

プロキオン「今日も収穫なしか…。どこいっちゃったんだ。」

ティコ「うん…。」

プロキオン「あ、ちょっと待って!今夜舞組との合同練習じゃん!」

ティコ「あ、そうだね。」

プロキオン「参ったな~。一旦星の界に帰るか。」

ティコ「う、うん…。プロキオン、ごめんね。」

プロキオン「え?」

ティコ「僕何もできなくて…。プロキオンに助けてもらってばっかで…。」

プロキオン「それはいいよ。僕がやりたくてやってるんだから。ティコ、ベガを助けたいんでしょ?このままじゃ前に進めないよ?できない事ばかり探してないで、できる事を探そう。」

ティコ「う、うん。ありがとう。プロキオンかっこいいね…。」

プロキオン「な、なにさ急に。照れるじゃん。」

ティコ「ホントにホントに。プロキオンもベガも僕の憧れだよ。僕にないもの沢山持ってて。素敵だなって思ってる。」

プロキオン「い、いやあ…。」

するとその時。

ロアン「あ…。あんた達。」

プロキオン「あ、ロアン。」

ティコ「ど、どうも…。」

仕事帰りのロアンが現れる。

ロアン「そんなとこで何してんだ?」

プロキオン「いやあ探し物がまだ見つからなくてね。しかし君とはよく偶然会うね。」

ロアン「そんな事よりあんた達噂になってるぞ。」

ティコ「え?」

プロキオン「あ、あれ?指揮棒がない。」

ティコ「どこかに落としたの?」

プロキオン「さっきまであったはずなんだけど…。ちょっとその辺見てくる。」

ティコ「え…。あ…。」

プロキオンがいなくなり、二人きりになるティコとロアン。

ティコ「…。」

もじもじするティコ。

ロアン「…あんた、あの犬がいなきゃ何もできないんだな。」

ティコ「う…。」

ロアン「…ところで、探してる琴立ってそんなに大事なものなの?」

ティコ「う…うん…。」

ロアン「他のものじゃダメなの?」

ティコ「う…うん…。」

ロアンはため息をつく。

ティコ「そ…その…。僕のじゃないんだけど…その琴立を大事にしている人がいて…。その人が困ってて…。それがないと舞踊会で演奏ができなくて…。その人、舞踊会を凄く楽しみにしてるから…。だから、何とか見つけてあげたくて…。」

ロアン「…。」

一方、指揮棒を探しにいったプロキオン。

ティコに言われた言葉を思い出すプロキオン。

プロキオン「かっこいいか…。ふふっ。嬉しい事いってくれるじゃないか。」

するとプロキオンの目に道端に落ちてる指揮棒が目に入る。

プロキオン「あ、あった!こんなとこに落としてたか。」

するとその時ー。

プロキオン「もが!!!」

背後から何者かに捕まるプロキオン。

第5話 憧れの友達
おわり

コメント

タイトルとURLをコピーしました