マカロン 第29話 愛をねだる者

絵本『マカロン』

クッキーと再会したピィ。

ピィ「クッキー…クッキーなのね?」

クッキー「マカロン…。」

ピィはクッキーとアップルを見て固まる。

ピィ「これはいったいどういう状況なの…?」

クッキー「……。」

ピィから目線をそらすクッキー。

するとレェが吊るされているアップルの元へ走っていく。

レェ「おーい!アップル!!大丈夫か?!俺だ!レェだ!」

アップルに向かって叫ぶレェ。
しかしアップルは返事がなく、目を開けることもなかった。

ピィ「アップル…?どうしちゃったの…?」

ピィはクッキーに駆け寄る。

ピィ「ねぇクッキー!あの子をそこからおろしてちょうだい!」

クッキー「…ダメだ。」

ピィ「どうして?!」

クッキー「…マカロン。ここは長の住処だ。もうすぐ長が帰ってくる。早くここから出て行くんだ。そこの葉の下にある梯子を真っ直ぐ下っていけば俺の住処がある。そこに一旦隠れてろ。」

ピィ「まずあの子を助けてからよ!」

クッキー「…助けてどうするんだ?あの太陽の妖精は長が捕まえた時からずっとあの状態だ。」

ピィ「なんですって…。」

レェ「良いからおろせよ!寝たふりしてんのか知らねえが叩き起こしてやる!」

クッキー「…ダメだ。」

ピィ「なんでよクッキー。」

クッキー「…他に何かないのかよ…。」

ピィ「え?」

クッキー「いったい…どれだけ心配したと思ってんだよ!!!」

ピィを怒鳴るクッキー。

ピィ「クッキー…。」

クッキー「こっちはずっと探し回ってたんだぞ!毎日毎日朝から夜まで!今日は東の方に行ってみよう、明日は西の方を探してみようって…。それでも見つからなくて、何かあったんじゃないのかって、無事なんだろうかって。心配で寝られなくて…。いつ帰ってきても良いように毎日葉っぱ用意して、お前の好きだった花の蜜もとってきて…。」

震えながら話すクッキー。その目には涙が浮かんでいた。

ココア「クッキー…。」

クッキー「それなのに帰ってきたお前は…。どこを見てるんだよ…。」

ピィ「…そうよね。心配かけてごめんなさい…。」

ピィはクッキーに謝る。

レェ「おい!取り込み中悪いがボネが来る前に早くこいつをおろしてやってくれ!」

ボネ「俺がどうかしたって?」

レェ「あん?」

レェが振り返るとそこにはボネがいた。

ココア「ボネ!」

レェ「げっ。ほ、ほらっ!早くしねえから!」

ボネ「人ん家の前で何騒いでんのさ。」

クッキー「悪い…。」

ココア「ボネ何してたの?」

ボネ「小人達の住処を回って話をしてたんだ。…ノエルが虫の子供相手に何か教えてるって噂を聞いてね。」

レェ「ボネ!」

ボネ「何さ。気安く呼ぶなよ。」

レェ「いや、何て言えばいいんだ。あのさ、ノエルを許してやってくれよ。あいつ…お前を置いていった事凄い後悔してたぞ…。」

ピィ「レェ…。」

ボネ「……俺の事気にしてるんだったら何で虫と友達になんてなるんだよ。」

ピィ「ボネくん!ノエルは虫とか小人とか関係なしに、子供達に生きていく力を身につけてあげたいだけなのよ。」

レェ「そうだよ。あいつ鈍臭いとこあるし、飯も結構食うからイラつくかもしれないけど、良いやつだろ?だからお前だって友達だったんだろ?」

ピィ「ノエルと私達はね、ベビーリーフを助けたくて戻ってきたの。太陽の妖精もベビーリーフを助ける為に一緒に頑張った友達なの。私もノエルも、あなた達友達を忘れた事なんてなかったわよ…。信じて欲しい。」

クッキー「……。」

ボネ「…もう何もかも手遅れなんだよ…。ノエルがいなくなってから俺の人生はおかしくなってしまった…。」

レェ「ノエルを助ける為だったとはいえ、お前が辛い目にあったのはあいつのせいじゃねえだろ?」

ボネ「俺は辛い思いしたのに、それなのにあいつは虫と仲良くして、先生にまでなって…。」

ボネの話を聞いたピィがボネに近づく。

ピィ「…可哀想な子。寂しい子だったのね…。小さな子供がそのまま大きくなってしまったみたい。」

ボネ「なっ…。」

ピィ「ここに来た時、小人の子供達が私に木の枝を振り回してきたわ。木の枝は誰かを威嚇したり、誰かを吊るし上げる為の道具なんかじゃないわ。」

クッキー「………。」

ピィ「子供達に正しい道を作ってあげるのが私達大人の仕事よ。確かにあなたは可哀想な子。でもあなたはいつまで子供でいるつもり?いつまでも周りのせいにしていられないわよ。」

ボネ「……っ。」

ピィはクッキーの方を向く。

ピィ「クッキー。木の枝を使って太陽の妖精をあそこに吊るしたのはクッキーね?」

クッキー「……!」

ピィ「…わかるわよ。あんな大掛かりな作業できるのクッキーくらいよ。それに…私に家の作り方を教えてくれたのはクッキーじゃない。」

ピィは少し哀しげな笑顔でクッキーに言った。

ピィはボネ達の元を去ろうとする。

ピィ「レェ!虫の子供達の住処に戻るわよ!」

レェ「え?」

ピィ「この騒ぎじゃ私達はもうベビーリーフにいられないわ。子供達だけでも、土に連れて行きましょう。」

レェ「お、おぅ…。」

ピィはボネとクッキーに向かって言う。

ピィ「ボネくん、ベビーリーフはいつ倒れるかわからないわ。それにこの雨、太陽の妖精の力はもうあてにできないわ。小人達に避難を呼びかけてちょうだい。クッキーも、虫達に呼びかけて欲しい。あなた達から話せば信じてくれるかもしれない。」

そう言ってピィとレェはボネ達の元から去っていった。

去っていくピィの後ろ姿を、クッキーは寂しげな表情で見つめていた。

ピィ「急ぐわよレェ!雨の音でよくわからないけど、何か騒がしいわ。」

レェ「あ、ああ!」

一方、虫の子供達の住処には大人が押しかけていた。

虫「見つけたぞ!小人め!」

グミ「ぐひっ。」

マフィン「な、なんなの?」

ノエル「………!!」

虫「さっさと住処から出て行け!ほら!仲間も捕まえたぞ!」

虫はグゥを捕まえていた。

ノエル「グゥ!」

グゥ「す、すみません~。網の中に隠れたら罠だったみたいでぇ…。」

ブラウニー「…何やってんですか。」

ノエル「…わかった。その虫と一緒に出て行くから子供達の住処を荒らさないでくれ。」

マフィン「え?!何で?!バームクーヘンの作り方教えてくれる約束じゃない!」

グミ「ぐぅっ、ぐぅっ。」

マフィン「ノエル小人だけど何も悪い事してないもん。蝶々結び教えてくれたし、屋根だって作ってくれたもん!何で出て行かなきゃいけないの?!」

ノエル「マフィンちゃん…。」

大人達に訴えるマフィン。

虫「マフィン!いいから俺達の言うことを聞け!お前達は騙されてるんだよ。」

マフィン「騙されてないもん!ブラウニー!あんたも黙ってないで何か言いなさいよ!」

ブラウニー「…うっ。え、えっと…。…こ、この方々は多分悪い方ではないと思います…。」

グゥ「ブラウニーくぅん。」

ブラウニー「や、屋根を作ってみて、飛行木を作るヒントを得たんです…。だから…他にもいろいろな事を教えて欲しいんです…。」

ノエル「ブラウニーくん…。」

その時、別の虫が押しかけてきた。

虫「おい!ついにポテヂィがやるってよ!」

虫「え?!いつ?!」

虫「今行くってよ。急に言い出したんだ。それにこの雨、太陽の妖精の力なんて所詮その程度だって事だ。もう脅しは効かねえ。小人達の武器なんてねえよ。」

ノエル「……?」

グゥ「何の話ですか…?それにポテヂィって…。」

虫「おい小人!今からお前達の長をぶっ潰しに行くからな!」

ノエル「なっ!!」

グゥ「ま、待ってください!僕達やその小人は長と無関係です。」

虫「前から少しずつこの話は動いてたんだよ。長に突き落とされたポテヂィを中心にな。太陽の妖精を武器にして調子こいてきた小人達を黙らせようってな。」

虫「俺達虫が小人の住処を貰う。おいガキども!お前達も葉っぱの上部で住みたいならもうその小人とは関わるなよ。よし行くぞ!」

虫の大人達はグゥを置いて去って行った。

グゥの紐を解くノエル達。

グゥ「あ、ありがとうございますぅ。それより…た、大変な事になりましたね…。」

マフィン「ノエル。何?何が始まるの?怖いよ。」

グミ「ぐぅ、ぐぅ…。」

ブラウニー「…うう…。」

震える子供達。

子供達を抱きしめるノエル。

ノエル「ピィ達を呼ぼう!」

グゥ「そ、そうですね。おーーーい!皆さーーーん!!!」

ノエル「皆んなーーー!!」

グゥとノエルの声がピィ達に届いた。

第29話 愛をねだる者
おわり

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