ピィとノエルを除いての食事。
ナッツ「どうしたブッサイクな顔して。」
ナッツが機嫌の悪そうなレェに気づく。
アーモンド「何か不満があるの?」
レェ「俺らの本来の目的は葉っぱや朝顔を育てて、ベビーリーフの住民を避難させる事だろ?時間がねえのにガキの面倒なんて見てる場合かよ。」
キィ「でも人数多い方が良いじゃん?枝拾いも少ないけど頑張ってやってたし。」
レェ「でも拾ったのはほとんど俺じゃねえか。それなのに俺より飯は食うし。俺だって疲れて休みてえのにガキは腫れ物扱いで甘やかしやがって。」
アーモンド「飯って…。」
ナッツ「ちっせぇやつ…。(ボソッ)」
グゥ「じゃあレェさんご飯食べ終わった後少し休みます?」
レェ「あぁ、そうする。」
キィ、グゥ、ブゥ「………。」
困った表情で顔を見合わせる3匹。
会話を聞いていたアーモンドも困惑した表情を浮かべる。
アーモンド(参ったわね…。こんな雰囲気が悪くて作業が進むのかしら…。)
食事後、長靴の入り口付近に集合したピィ達。
ピィ「できた分だけとりあえず立ててみましょ。」
支柱となる枝を土に挿し、ノエルが支える。
ピィ「ノエルしっかり支えててね。じゃあ私が次に繋ぐ枝達を持つから、アップル結んでくれる?」
ノエル「わかった。」
アップル「良いわよ。」
身軽なアップルが枝と枝を結びつける。
キィ「結構いい感じじゃん♪」
ブゥ「凄い!長靴の入り口まではまだまだだけど、いけそうな気がする。」
ピィ「じゃあノエル。この朝顔の種を土の中に入れて。そしたらここから葉っぱが生えるから。」
ノエル「え?!ここから葉っぱが生えるの?」
ピィ「そうよ。自分の目で確かめてみなさい。あ、すぐには生えないわよ。」
グゥ「じゃあ作業の続きを始めましょうか。キィさんが枝拾い…て、あれ?レェさんいないからキィさん1匹になっちゃいますね。」
キィ「グゥ~。さっきレェとピィとノエルの代わりにグゥとアップルが枝拾いに行くって言ったじゃ~ん。」
グゥ「あはは。そうでした~。」
ピィ「ん?なに?レェいないの?そういや静かだわ。」
グゥ「レェさん疲れてるそうなので…。」
ピィ「あらそう…。」
レェを除き、作業を再開するピィ達。
グゥ「ふひぃ~~。足腰にきますね~。」
キィ「も~~!年寄りくさいんだから~!」
アップル「私飛べるから楽ちん♪」
キィ「あ、ずるーい!」
すると遠くからピィの声が。
ピィ「こらーー!!あんた達喋ってばっかいないで手を動かしなさい!」
キィ「ひ!は、は~い!」
グゥ「す、すみませ~ん。」
ピィ「全く。危機感薄いわね。大丈夫かしら。」
ブゥ「ピィは凄いね。喋りながらでも作業早いから。」
ノエル「できた!蝶々結び!」
ピィ「あら、形になってきたじゃない。あとはもっときつく結べるようにね。ほら、じゃないとさっき立てた枝が崩れちゃうでしょ?」
ノエル「うん。」
ブゥ「…。レェ機嫌悪かったな。」
ピィ「あまり真面目に聞いてると病気になるわよ。」
ブゥ「レェの気持ちわからなくもないんだ…。でも雰囲気悪くするような事言わないでほしい。前からそうだけど、口に出しすぎだよ。」
ピィ「でもレェがいないと枝拾いはきついわね。私やキィもレェの体力には敵わないもの。レェがいない状態で雰囲気よくゆっくり作業を進めるか。それともレェがいて雰囲気は悪いけどガンガン作業を進めるか。どっちを取るかね。」
ブゥ「僕はどっちかっていうと雰囲気悪い方が嫌だけど…。でもそんな事言ってられる状況じゃないってのもあるし…。一刻も早く朝顔を育てなきゃいけないし。」
ピィ「そうね。だから何かしらお互い妥協点を作らないと。」
考え込むブゥ。
その日の夜。
レェ(ふぅ…。昼に寝ちまったせいで眠れねえ。)
レェは小屋を抜け出し長靴の入り口付近へ向かう。
レェ(ん?あれは…。)
ピィ「ノエル!もっときつく結んで!」
ブゥ「頑張れノエルくん。」
ノエル「う~、う~。」
ピィ、ブゥ、ノエルは遅くまで支柱の枝を繋ぐ作業をしていた。
その時。
ガン!!
レェ「いって!!」
長靴の入り口から枝が降ってきてレェの頭を直撃した。
ノエル「あ。」
ブゥ「あれ、レェ。」
ピィ「どうしたのよ。こんな遅くに。」
レェ「ね、寝れねえからちょっとだけ枝拾いしようと思ったんだよ。お前らこそ遅くまで何してんだよ。」
ピィ「支柱を少しでも早く完成させたいからね。」
ブゥ「レェがいなかったからやっぱり枝は少ししか集まらなかったんだ。だから交代で作業時間伸ばそうって事になって。」
ピィ「でもノエルはあんたとも一緒に作業したいって。」
レェ「は?」
レェに怯えてピィの後ろに隠れるノエル。
ピィ「ノエルは自分が仲間外れだったり誰かが仲間外れなのは嫌なのよ。皆んなで仲良くやりたいんだって。レェともできるなら仲良くしたいんだって。」
ノエルを見るレェ。
ノエル「あ、あの…。どうしたら体力と力が出るか教えて…。あ、あと枝を早く拾う方法…。」
レェ「あん?」
ノエル「教えてほしい事があったら言ってってピィが言ってたから…。」
レェ「どうしたらっつってもな…。ん?お前手ボロボロじゃねえか。それじゃ余計力入らねえだろ。手袋はめろよ。その方がきつく結べる。」
そう言いノエルに手袋を貸すレェ。
ピィ「あら、珍しい。気がきく。」
レェ「うるせえ!あとお前姿勢が悪い。腰を深く落とせ。そしたら力が入る。こう、こうだ。」
ノエルに紐の結び方を指導するレェ。
ノエル「んぎぎぎ…。」
レェ「そう、そうだ。こんなもんだろ。」
ノエル「ふう…。あ、ありがとう。」
レェの顔色を伺いながら小さく笑うノエル。
ピィ「意外に真面目じゃない。夜中に出てきて作業するなんて。」
レェ「別に…。……俺はさ、ベビーリーフにいた頃から目標もなくふらふらと適当に生きてきたからな。だから最近の生活は地味に楽しかったんだよ。目標を持って、毎日新しい事の発見で、自分の可能性が広がっていく感じがしてよ。」
レェ「ベビーリーフに執着してた自分がアホらしくなったりもしてさ。俺は別に残してきたものなんてなかったはずだしな…。」
ブゥ「レェ…。」
レェ「別にベビーリーフがどうなっても良いって思ってるわけじゃねえよ。アホくさいとこかもしれねえけど自分が育った場所だしよ。そんなとっからやってきた世間知らずなお坊ちゃんにイラッとしちまったのかな…。俺は長靴に落ちてからずっと努力してきたのに。そりゃ最初はさぼった事もあったけどよ。子供だから、育ってきた環境がどーだから仕方ないって理由で甘やかされて、その尻拭いをさせられてる気がしてイラついちまった。……でも俺らだって長靴に落ちたばっかの頃はなぁんにも知らねえし何にもできない生き物だったんだよな。」
ブゥ「…なんだ。レェも僕と一緒で友達いなかったんだ。」
レェ「友達いないとは言ってねえだろ。お前と一緒にするな。」
ブゥ「僕考えたんだけどね。レェにはやっぱり枝拾いしてほしい。その方が効率良いし。でもレェだってそれじゃ疲れちゃうから、その時は僕が代わりにやるから。でも、どんなに頑張ってもレェほど拾えないと思うから…。そこはごめん…諦めてほしい…。もちろん全力は出すよ…!」
ノエル「僕も頑張るから、お願い。ご飯もちょっとしか食べないから。」
レェ「……わかったよ。…飯は食え。倒れられても困る。」
ピィ「…ふふっ。じゃあ今日はこのまま久々に葉っぱの上で寝ちゃいましょうか。」
ブゥ「葉っぱの上で寝るなんてベビーリーフ以来だね。」
ピィ「ベビーリーフの皆んなの為に、協力して頑張りましょう!」
久しぶりに葉っぱの上で眠りについたピィ、ブゥ、レェ、ノエル。
そして次の朝、驚くべき事態が起きたー。
第15話 ほんの少しの友情
おわり
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