星のティコ 第13話 あなたのために

絵本『星のティコ』

◆前回のあらすじ◆

プロキオンとミューに逃げられた町長は、仕掛けてあった大量の水を地下室に放出。

激しい水に流されるプロキオン達。そしてティコとベガも離れ離れとなる。

ティコが流された先は、ロアンが捕まっている教会だった。ロアンに歩み寄ろうとするティコ。しかし町長に捕まってしまう。

ティコが外へ流されたころ、ベガ、プロキオン、ミューは…。


ベガ「プロキオン!プロキオン!しっかりして!」


プロキオン「う……。ゲホゲホ!」


ミュー「ゴホ!ガホ!」


水を吐き出し目を覚ますプロキオンとミュー。


ベガ「あぁ!良かった!」


プロキオン「ベ、ベガ?!ここは…外?」


ベガ「ええ、そうみたい。」


ベガ達も外へと流されていた。


プロキオン「ベガ、どうしてここに?」


ベガ「事情は後で話すわ。それよりティコとロアンがいないの。」


ミュー「ベガーーー!もとはといえば全部あんたのせいよーーー!」


ベガ「えっと…、どちら様?」


その時、地上に流れ落ちるような星がベガ達のもとへ降り注ぐ。


プロキオン「これは…。」


ベガ「天の川…!!」


プロキオン「星の界の皆が作ってくれたんだ!」


トナ「ティコー!プロキオンー!ベガー!今船を送るから急いでー!」


アルファー「くそー!離せー!」


ミザール「お黙り!!」


ミュー「やった!これで舞踊会に間に合うわ!」

笑顔が溢れるベガ、プロキオン、ミュー。


その頃、町長に捕まってしまったティコ。


ティコ「痛い、離して!」


ロアン「町長、やめて!」


町長「暴れるな!早く一緒に来い!」


ティコ「いやだ!」


町長「ロアンがどうなってもいいのか?!」


ティコ「…!」


ロアン「ティコ…。」


ロアンを睨む町長。


町長「ロアン…。身寄りのないお前を屋敷で働かせてやったのに、恩を仇で返しやがって!お前はクビだ!この街から出ていけ!」


ロアン「…!」


ティコ「そんな、ロアンは悪くない!」


町長「それが嫌だって言うんならお前にはこの街で客寄せパンダになってもらおうか!そしたらロアンは助けてやる。」


ティコ「う……。」


ティコを不安げに見つめるロアン。


そんなロアンの目を見るティコ。


ティコはロアンとの約束を思い出す。


ティコ「…だめ…。できない…。」


町長「ん??薄情なやつだな。ロアン、聞こえたか?!お前が危険を犯して助けてやったのに、その結果がこれだ!私に従っていればこんな事にはならなかったのになあ!!」


ティコ「違う!」


町長「何が違う?」


ティコ「僕は星の界に帰らなきゃいけない。帰って舞踊会に出なきゃいけない。約束したんだ。ロアンに歌を聴いてもらうって!」


ロアン「ティコ……。」


ティコ「ベガやプロキオンの為に、あの事故で辛い想いをしたロアンの為に、町長さんの為にも歌いたいんだ。僕の歌で、希望を持ってもらいたいんだ。」


町長「……私の為……?……なにわけのわからない事を……。」


ティコ「町長さん苦しいんだよね?辛いんだよね?大事な相棒を失って、それだけでも辛かったのに。一人でこの街を立て直そうとずっと頑張ってきたんだよね。町長さん本当は良い人なんでしょ?この街の為に頑張って、親を亡くしたロアンの面倒を見て、悪い人ならそんな事しないと思う。本当は僕を捕まえたくないんでしょ?この街の為に仕方なくやってるんでしょ?」


ティコの言葉に、黙り込み、ティコから手を放す町長。


ティコ「町長さん……。」


町長「……。そうさ…。苦しいよ…。最初は楽しかったよ。観光客が多かった頃は。皆喜んで、また来たいねって言ってくれて。もっともっと楽しんでもらえるよう次はどうしようって。」

町長「でもあの事故が起きて、あいつが亡くなって、全てが変わってしまった。俺なりに必死に考えて、あいつがいなくてもやっていけるよう、何とか街を立て直そうとした。でもそう簡単にはいかなかった。観光客は減り続けた。そしたら周りは俺が無能なせいでと言い始めた。協力するわけでもなく、責任をとるわけでもなく、文句だけはご立派だ。俺は…この街の為に…必死にやってるのに…。」


ロアン「町長……。」


町長「だから…あいつの代わりを探そうと思った。あいつみたいな珍しい生き物を…。もう…どうしていいのかわからないんだ。頼む……邪魔をしないでくれ…。もう疲れたんだ…。」


町長は小さくうずくまる。


ティコ「町長さん……。」


その時ー。


プロキオン「ティコーーー!」


プロキオン達が船に乗って現れた。


ティコ「プロキオン!ベガ!」


ロアン「ベガ?!」


ミュー「早く乗ってよ!舞踊会始まっちゃうじゃない!」


ティコ「え…、えっと…誰…?」


ベガは船から降り、ロアンのもとへ。


ベガ「ロアン、良かった…無事で…。」


そう言いながら、ロアンを縛っていた縄をほどく。


ロアン「ベガ…どうしてここに…。」


ベガ「怖かったでしょ…ごめんね…。」


ベガはロアンを強く抱きしめた。


そんなベガ達を安心した笑顔で見るティコ。


ロアン「………。」


プロキオン「さぁティコ、ベガ!早く乗って!」


ティコ「う、うん…………。」


ティコはうずくまったままの町長を心配した表情で見つめる。


地上の様子を受けて、動き出す星の界の生き物たち。


トナ「よし!急いで準備に移ろう!」


ミザール「ベガ達の衣装持ってくるわ!」


震えながら佇むアルファー。


アルファー「くそ…くそおおおおおおおおおお!!!!!」


大声で叫びながら、アルファーは地上に向かって急降下していく。


トナ「あれ?あいつ何で地上行ったの??」


ミザール「ま、まさか…、隕石になってあの街に衝突する気なんじゃ……?!」


トナ「え…?そんなまさかぁ。」


ミザール「自暴自棄になったやつなんて何するかわからないわよ…!!」


トナ「ど、ど、ど、ど、どうしよう…。」


ギュオオオオオオ!!!!


コンフェイトに向かってアルファーが猛スピードで降ってくる。


ベガ「ちょっと、何あれ…!」


ティコ「…ま、まさか隕石?!」


ロアン「嘘……。」


空を見上げ、青ざめるティコ達。

ミュー「な、なんかこっちに向かってない…?」


プロキオン「ま、まずい!!皆逃げろお!!」


大慌てで逃げようとするティコ達。

ベガ「で、でも逃げるっていったってどこへ?!街の皆んなは?!」

ティコ「町長さん立って!!」


ロアン「う……!」


ロアンは痛めていた足により大きくバランスを崩し、転んでしまう。


ベガ「ロアン!!」


ロアンはそのまま地形の悪さと隕石の振動で崖の方へ転がっていく。


ロアン「あ…!」


ロアンは崖から落ちてしまう。


ベガ「ロアーーーン!!」


ティコ「ロアン!!ベガ!!!」


ロアンを追いかけ、ベガとティコは飛び立つ。


アルファーがコンフェイト目がけて降ってくる。


アルファー「くそがああああああああ!」


アルファー「……!」


アルファー「お前……なの…か……?」


アルファー「なんて……なんて格好してるんだよ……。」


ティコ「ベガ…ロアンは?」


ベガ「大丈夫…。びっくりして気絶しちゃってるけど…。」


ティコ「そっか……良かった…。隕石も止まったみたいだ。本当良かった…。」

第13話 あなたのために

おわり

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