◆前回のあらすじ◆
町長にさらわれたプロキオン。ミューも同じく捕まっていた。
プロキオンを助ける為町長の前で羽を出したティコ。そんなティコを町長の前から連れて逃げ出したロアン。追いかけてくる町長から逃げ回る2人は崖から転落してしまう。
崖から落ちたティコとロアン。
ティコ「いたた…。」
起き上がるティコ。
隣を見るとロアンが倒れていた。
ティコ「ロ、ロアン!大丈夫?」
ロアン「いって…。大丈夫…。」
上を見上げる2人。
ティコ「あそこから落ちたんだ。」
ロアン「大した高さじゃなくて良かった。」
ティコ「登っていけるかな…?」
ロアン「ダメだ。付近は町長がうろついてるだろうし、住民が使う山道を探した方がいい。」
立ち上がろうとするロアン。
ロアン「う……。」
顔をゆがめ、足を抑えるロアン。
ティコ「ど、どうしたの…?足ケガしたの?」
ロアン「ちょっと痛めただけだ…。」
ティコ「あ…。ちょ、ちょっと休んでて。僕山道探してくるから。」
ロアン「いいよこれくらい。歩ける。」
ティコ「で、でも…。」
その時、ロアンは山肌に洞穴がある所に気づく。
ロアン「なんだあれ?」
中を覗く2人。
ティコ「洞窟…?」
中に入ってみる2人。
ロアン「灯りがある…。普段から人が使ってる道なのか…?」
ティコ「これは住民が使う山道じゃないの?」
ロアン「ああ…。私が知ってる道とは違う。洞窟があることは初めて知った。」
洞窟の中を歩くティコとロアン。
ティコ「………。」
気まずそうなティコ。
ティコ「あ、あの……。」
ロアン「何?」
ティコ「足…大丈夫?」
ロアン「平気。」
ティコ「い、痛かったらおんぶするから、無理しないでね…。」
ロアン「はあ?おんぶぅ?」
ティコ「だ、だって、こうなったの僕のせいだし…。」
ロアン「……。いいよ。あんたのせいじゃない。」
ティコ「で、でも…。」
ロアン「第一、あんた私より背低いのにおんぶできるの?」
ティコ「う……。」
その時、2人の足元をのそのそと小さな生き物が横切る。
ティコ・ロアン「わ!!!」
小さな生き物の正体はトカゲのような姿をしていた。
ロアン「ト、トカゲ…。」
ティコ「あ…。これカメレオンだ…。」
ロアン「カ、カメレオン…?」
後ずさりするロアン。
ティコ「あ…ロアン、カメレオン苦手…?」
ロアン「べ、別に…!」
カメレオンははのそのそと歩いていく。
カメレオンの行く方へついていくティコ。
ロアン「何でついていくんだよ?!」
ティコ「え…だってこっちしか道ないし…。」
カメレオンについていくと、少し明かりが強いスペースが見えてくる。
そこには一人の中年男の姿が。
男「……ん?なんだ君たち?」
ティコ「ヒ、ヒト…?」
ロアン「な、何でこんなところに…?」
男の周りには、日用品や食料、ガラクタや寝床があった。
ティコはガラクタにふと目をやる。
ティコ「あ、あーーー!こ、琴立!!」
ガラクタの中に琴立があることに気づく。
ロアン「琴立?あれがあんたが探してたやつ?」
男「いやー、びっくりしたぁ。珍しいな。こんな所に子供が来るなんて。」
日用品や食料を見るロアン。
ロアン「おじさんここで暮らしてるの?」
男「暮らしてるというか…。住み込みで山の整備に来てるんだよ。昔この山隕石落ちただろう?」
ロアン「コンフェイトの住民じゃないよね?」
男「ああ。でも出身はコンフェイトだよ。あの隕石事故があってから、家族で山の麓の街に引っ越したんだ。今はこうやって仕事で交代でここに来てるのさ。」
ティコ「あ、あの…、この琴立どうしたんですか?」
琴立を指差すティコ。
男「ああ、これ?町長が拾ったんだよ。」
ロアン「町長って、コンフェイトの?」
男「そうだよ。そこのガラクタのほとんどがそうさ。この琴立は俺の娘のお土産にしたくて町長から譲ってもらったんだ。」
ロアン「町長ここによく来るの?」
男「ああ。最初は俺達の仕事のための道だったけど、途中から町長も珍しいもの拾った時に使うようになったんだ。この先を道なりに行くと町長の屋敷に繋がる。」
ロアン「どうりで町長が珍しいもの拾ってきた姿誰も見かけないわけだ。」
男「昨日の朝も馬みたいなの引っ張てたぞ。しかしあいつも年をとったな~。まぁいろいろ苦労してるんだろうけど。」
ティコ「す、すみません。この琴立返してもらってもいいですか…?僕の知り合いのものなんです。」
男「え、そうなの?娘のお土産にしようと思ったんだけど…。もらっちゃダメ?」
ティコ「そ、それはちょっと…。その知り合いが、それがなくて困ってるんです。」
男「いいじゃ~ん。そこをなんとか。」
ティコ「ダ…ダメですっ!」
少しだけ力強いティコの声に目を丸くする男。
ティコ「あ…す、すみません。で、でも…、その人舞踊会をやるためにその琴立が必要なんです…。その人、舞踊会凄く楽しみにしてて…。凄く張り切ってて…。練習も凄い頑張ってて…。だから…どうしても成功させてあげたいんです。喜んでほしいんです。」
ロアン「……。」
ティコの真剣な表情にやられた様子の男。
男「…ふはははっ!冗談冗談!いやそんなに冗談でもなかったけど、そんなに大事なものなら仕方ないね。もともとはその知り合いのものだしね。」
琴立をティコに手渡す男。
ティコ「あ…ありがとうございます!」
琴立を嬉しそうに握りしめるティコ。
ティコ「良かった…。ベガ…。プロキオン…。琴立見つかったよ…。」
男「なあ坊や。その知り合いってもしかして好きな女の子か?」
ティコ「そ、そんなんじゃないです!」
顔を真っ赤にするティコ。
男「ははっ。そうかいそうかい。」
笑う男の足元にカメレオンがのそのそとやって来た。
男「おうお前どこに行ってたんだ。」
ティコ「そのカメレオンおじさんが飼ってるの?」
男「いいや。ここに住み着いてるだけだよ。この山結構カメレオン出没するからな。町長も昔飼ってたんだよ。」
ティコ「そうなの?」
男「あの隕石事故で亡くなってしまったけどな。それからだあよ。あいつがおかしくなってしまったのは…。」
ティコ・ロアン「え……?」
第8話 秘密の道
おわり
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