◆前回のあらすじ◆
星に一番近い街コンフェイトで琴立を探すティコとプロキオン。しかし夜になっても琴立は見つからない。
そんな中、コンフェイトで出会った少女ロアンの家に泊めてもらう。ティコはロアンの両親が不在な事に疑問を抱く。その夜ロアンはティコの歌声を心地よく聴いていた。
ティコとプロキオンが地上で夜を迎える頃、星の界では舞踊会の練習が行われていた。
トナ「ティコとプロキオンどこ行っちゃったんだろうね。」
ミザール「珍しいわね。あの二人が練習さぼるとは思えないし…。」
姿が見えない二人を探す、同じ合唱組のトナとミザール。
ベガ「あら?トナにミザール、どうしたの?」
トナ「あ、ベガ!」
ベガ「ティコとプロキオンはどうしたの?練習の時間なのに。」
ミザール「それがまるっきり姿を見かけないのよ。何か知らない?」
ベガ「えぇ…。わかった。私も探してみるわ。」
トナ「さすがベガ。助かるよ。」
ミザール「このままじゃ練習できないものね。」
ベガ「私はあっちの方角を探してみるわ。」
ベガはそう言ってトナとミザールの前から姿を消した。
ベガが向かった先には、化粧直しをするミューがいた。
ミュー「~~♪」
ベガ「ミュー!」
ミュー「!!あ、あらベガじゃない。やぁねぇ、びっくりさせないでよ。オホホ。」
ベガ「ミュー、またこんな所で練習サボってたのね。」
ミュー「オ、オホホ…。い、今から練習行こうと思ってたところよ。」
ベガ「噓おっしゃい!あなたがいつも練習サボってるって皆から聞いてるのよ!もう当日ステージに立たせないわ!」
ミュー「ちょっと待ってよ!私の美しい晴れ姿を見せられないなんて冗談じゃないわ!わかったわよ練習すればいいんでしょ?!」
ベガ「ダメよ。罰として、ステージに立つための条件をつけるわ。」
ミュー「な、なによ。条件って…。」
ベガ「そうね…。」
ロアンの家で朝を迎えたティコとプロキオン。
ロアン「おい、起きろ。」
プロキオン「うん?」
ティコ「ふえ?」
ロアン「さっさと起きて早く出ていきな。こっちは用事があるんだ。」
ティコ「あ、ご、ごめん…。」
ロアンに無理矢理起こされ、家から追い出されるティコ達。
ティコ「あ…。泊めてくれてありがとう…。」
ロアンの家の前で礼を言うティコ。
ロアン「…。ねえ、あんた達どこから来たの?」
ティコ「え?え…えっと…。と、遠いとこから…。」
ロアン「…そっ。…昨日夜歌ってた歌…なんて歌?」
ティコ「え!聞こえてたの?!あ…ご、ごめん。起こしちゃった…?」
ロアン「いや…。」
その時、慌ただしく街を走り降りてく町長の姿がロアンの目に入る。
町長「急げ急げ!」
ロアン「町長…?」
ティコ「え?」
プロキオン「あの人が町長?」
ロアン「だから外で喋るなって。さ、町長に見つかる前にさっさと遠いところへ行きな。」
ロアンと別れたティコ達。
プロキオン「あの子もうちょっと優しい言葉をかけれないもんかね。」
ティコ「う、うん…。でも悪い子じゃないと思うよ…。」
プロキオン「さあティコ、今日は昨日行けなかった街の端へ行ってみよう!」
ティコ「うん…!」
街の端へやって来たティコ達。
プロキオン「うわー!いい眺めだなー!」
ティコ「凄い…。海がこんな近くに見える。」
街の最果てから見える景色に感動するプロキオンとティコ。
ティコ「…?ねぇプロキオン。あれ何だろう。」
ふと目線を変えると、沢山の石がある事に気づく。
プロキオン「これは…墓石…?」
ティコ「墓石って…。お墓…?こんなに沢山…?」
その時。
おじさん「おーいティコくーん!」
ティコを呼ぶ声の先には、コンフェイトまで車に乗せてくれた夫婦の姿が。
ティコ「あ…。おじさん、おばさん…。」
プロキオン「やばい!」
プロキオンは慌てて四つん這いなる。
おばさん「ティコくんお母さん見つかった?」
ティコ「あ…、えぇっと……。」
プロキオンはティコの足を掴み、コソコソと喋る。
プロキオン「ティコ、お母さんは見つかった事にしよう。この嘘には限界がある。」
ティコ「う、うん…。」
ティコは夫婦に向かって話す。
ティコ「あ、あの…見つかりました…。」
おじさん「それは良かった!」
おばさん「ついでに観光していくの?」
ティコ「は、はい…。」
おばさん「ゆっくりしてってね。何もない街だけど。」
夫婦はそう言った後、ひとつの墓石に近づいた。
ティコ「…?」
おじさん「あ、ティコくんも良かったらおじさん達の孫に顔を見せてくれないか?」
ティコ「孫…?」
おじさん「ティコくんは知らないかな。この街の事故。この街は昔もっと大きかったんだよ。でも…ある日隕石が落ちてきてね。街のほとんどがなくなってしまったんだ。人もね。」
ティコ「あ…。」
ティコは地上に降りた時にプロキオンが言っていた話を思い出す。
おばさん「おばさんたちの子供と孫もね、その事故で亡くなっちゃったの。生きてたらティコくんと同じくらいになってたわ。」
ティコとプロキオンは悲しげな表情で立ち尽くす。
おばさん「あ、ごめんね。暗い話しちゃって。もう昔の話だし、おばさん達もう元気だから気にしないで。」
その時。
ロアン「あ…。」
ティコ達の前に、花を持ったロアンが現れた。
ティコ「ロアン…。」
おばさん「あらロアン!今日はお仕事休み?」
ロアン「…はい…。」
ロアンはそう言って、ふたつの墓石に近づき花を添える。
ロアン「じゃあ…これで…。」
ロアンはすぐに立ち去ろうとする。
おじさん「ロアン、せっかく来たんだからもうちょっとお父さんとお母さんに顔見せておやり。」
ロアン「いえ…。いいです…。」
ロアンは足早にその場を立ち去って行った。
夫婦と話すティコ。
おじさん「そうか…。ロアンと知り合いだったか…。」
ティコ「いえ…。知り合いってほどじゃ…。」
おじさん「あの子はちょっと無愛想な子だけど、本当はいい子なんだよ。昔はもっと明るくて素直な子で。まあ難しい年頃ってのもあるけど、両親を亡くしてからどうも閉鎖的になっちゃってね…。」
ティコ「ロアンの両親も隕石の事故で…?」
おじさん「ロアンの父親はこの街の医者だった。不器用で優しい人だったよ。お母さんは綺麗な人でね。仲の良い夫婦だった。ロアンはあの時5歳くらいかな。お母さんが病気になってね。」
おばさん「ロアンのお父さんはその病気を治すために、山の頂上にある薬草を採りに行って、そのまま隕石の事故にあっちゃったの…。」
ティコ「そんな…。」
おじさん「ロアンは帰って来ないはずの父親を待って、毎日ここで星に願い続けた。『お父さんお願い、帰ってきて。お母さんを助けて』ってね…。」
おばさん「ロアンの願いは虚しく、お母さんはそのまま病死しちゃってね。」
ティコ「……。」
おばさん「両親が亡くなってから私達が面倒を見るといったんだけど、拒まれてね…。父親が今の町長と仲が良かったのもあって、あの若さで屋敷で働いてるの。」
おじさん「ロアンにっとっちゃ余計なお世話かもしれないけど、ティコくんと出会ったのも何かの縁なんだ。ロアンと仲良くしてやってくれ。この街は子供も少ない。あの子の止まった心が動いてくれるといいと思うよ。」
ティコ「はい…。」
夫婦はそう言って、ティコ達の前から去って行った。
第4話 ロアンの願い
おわり
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