星のティコ 第7話 ティコの意地

絵本『星のティコ』

◆前回のあらすじ◆

町長の前で喋ってしまったプロキオン。何者かに捕まってしまう。

ティコは助けを求めに星の界に帰ろうと羽を出した所をロアンに見つかる。甘えるなとロアンに怒鳴られたティコは、今度は自分がプロキオンを助けると決心する。

牢屋の中で何者かに起こされたプロキオン。

プロキオン「わーー!わーー!」

??「ちょっと~!でかい声出さないでよ。びっくりしたじゃない。」

プロキオン「お、お化けーーー!!」

??「お、お化けって、失礼ね!!私よ!ミューよミュー!」

プロキオン「……え?ミューって…。あの厚化粧で性格の悪いサボリ魔の…?」

ミュー「く…っ。随分ボロクソ言ってくれるわね。」

プロキオン「もしかしてスッピン…?そんな顔だったんだな。」

ミュー「うるっさいわね。」

プロキオン「まあいいや。何でこんなとこにいるんだ?」

ミュー「ベガに言われて琴立探しに来たのよ。じゃなきゃ舞台に立たせないって言われっちゃたもんだから。」

プロキオン「ベガに?」

ミュー「ええ。ほんで地上に来たら太ったジジイに捕まって、この通り髪ボサボサ!」

プロキオン「もしかして町長か?」

ミュー「町長?さあ~。それより私今どうなってんの?!どっかに鏡ないの?!」

プロキオン「ダメだ。この扉ビクともしない。鍵がかけられてる。」

その時、町長が現れた。

プロキオン「ちょ、町長!」

町長「やあ、目が覚めたか。」

プロキオン「お前!こっから出せ!」

ミュー「ちょっとあんた!鏡とメイク道具とつけまつ毛とカラコンよこしなさいよ!」

町長「悪いが君たちにはここで暮らしてもらう。暴れたら保健所に連れてくぞ。」

プロキオン「じょ、冗談じゃない!一刻も早く帰らなきゃならないんだ!舞踊会があるのに!」

ミュー「そーよそーよ!私の晴れ舞台なのよ!」

町長「全くやかましいな。いくら騒いだってここから出してやらないよーだ。べろべろばっ!」

そう言って町長は部屋を出た。

ミュー「なんなのあいつむっかつく~!」

プロキオン「くそう、こんな事してる場合じゃないのに。ティコ……、大丈夫かな。」

ミュー「ん?何?あの小僧も来てるの?あー無理無理。一人じゃ何もできないって。今頃星の界に泣いて戻ってるわよ。」

朝を迎えたコンフェイト。

仕事に向かおうとするロアン。

ティコ「あ…。」

偶然ティコと遭遇。

ロアン「……!」

ロアンは気まずそうにティコを避けてった。

ティコ「……。」

ティコは少し落ち込みながら、街の中心部に向かう。

すると街の掲示板に集まる人だかりを発見。

ティコ「あ…!すみません、ちょっと聞きたいことが……。」

住民に近づいてくティコ。

すると、住民達が見ていた貼り紙が目に入る。

ティコ「こ、これ……。」

貼り紙にはこう記載されていた。

『この日、星に一番近い街であなたは奇跡の目撃者となる!喋る犬とペガサスが登場!!主催・コンフェイト町長』

ティコ「プ、プロキオン…?!……と、誰だろう…。」

慌てるティコ。

ティコ「やっぱり町長に捕まっちゃったんだ。しかもこの日舞踊会当日だ…。急いで町長のとこに行って返してもらわなきゃ。」

町長の屋敷に向かっていくティコ。

一人の女性が貼り紙を見る。

「……。」

町長の屋敷へやって来たティコ。

受付にいたおばさんに遭遇する。

ティコ「すみませーん!」

おばさん「あ、坊やあの時の!ちょっと貼り紙見たわよ!あれ坊やが連れてたワンちゃんよね?!」

ティコ「は、はいっ。あの、町長さんいますか?」

おばさん「町長なら出かけてるわよ。ねえねえ、あのワンちゃん喋るって本当?」

ティコ「い、いえ…喋らないです…。あのプロ…その犬返してほしいんですけど…。」

おばさん「何?町長勝手に自分のペットにしちゃったの?あの人本当もの好きねえ。でもごめんなさい。多分この屋敷にはいるんだろうけど、私は使用人だから大事な部屋には入れてもらえないのよ。入れたとこで勝手に逃がしたら怒られるし。」

ティコ「そ、そうですか…。」

おばさん「町長今お墓参りに行ってるから、行ってみるといいわよ。人のペット勝手にとるんじゃねー!って怒ってやりなさい。」

ティコ「は、はいっ。ありがとうございます。」

ティコは急いでお墓があった場所へ向かう。

その様子をロアンは偶然見かける。

ロアン「あいつ…。」

その頃、お墓参りをしていた町長。

町長「しばらく来れなくてごめんな。いろいろ忙しくてな。お前がいなくなってから大変だったけど、やっと何とかなりそうだよ。」

ティコ「あの、すみません。」

町長のとこへティコが現れる。

町長「ん?あ、ああ。君は昨日の…。どうしたんだい?」

ティコ「プロキオン…。あの貼り紙に載ってた犬、返してください。」

町長「な、何のことかね。確かに君の連れてた犬に似てるけど違うよ。」

ティコ「か、返してください!大事な友達なんです!」

町長「だーかーらー違う犬だって!言いがかりはやめてくれ。あんまりしつこいと警察に連れてくぞ?!」

ティコ「う………。」

するとー。

ティコはバサッと羽を出した。

町長「!!!い、いいいいいい?!」

ティコ「は、早くプロキオンのところに連れてって!ぼ、僕だって珍しいから…。さ、さあ…は、早く…。」

震えながら話すティコ。

町長「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って。ほ、本物か…?」

ティコの羽に触れようとする町長。

するとその時。

ロアン「バカ!!!」

ティコの手を引っ張り、町長のもとから連れ去るロアン。

ティコ「ロ、ロアン?」

ロアン「何やってんだバカ野郎!売り物にされたいのか?!」

逃げて行った2人を追いかけようとする町長。

町長「ロ、ロアン…?な、何だかよくわからないけど捕まえておいた方が良さそうだ…!」

町長の頭の中で妄想が始まる。

「凄い町長!喋る犬にペガサス、今度は羽の生えた人間を捕まえるなんて。」

「観光客も増えましたね!さすが町長!」

「町長のおかげです!」

「町長!町長!町長!」

町長「逃がしてたまるかーーーー!!!!」

逃げ回るロアンとティコ。

ロアン「お前、今すぐ帰れ!」

ティコ「え、で、でも…!」

ロアン「もうこの街にはいられない!今すぐ飛んでさっさと帰れ!」

ティコ「で、できないよ!プロキオン返してもらわなきゃ…!琴立だってまだ見つかってない…!」

町長「お~い!待って~~!」

ロアンとティコが向かった先は塀で行き止まりに。

ロアン「ダメだ、このままじゃ捕まる。」

ロアンは塀の外側を覗き込む。

ロアン「狭いけど足場がある…。ここに一旦隠れるか。」

塀の外に降りたロアンとティコ。

が、しかし。

ガラッ!

足場が崩れる。

ロアン「……!」

ティコ「わ、わーーーー!!!!」

第7話 ティコの意地

おわり

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