朝顔の芽が出てから数日。
アーモンドの予想通り、ピィ達が寝ていた葉っぱの成長が止まった。
この日朝早く、ノエルはアーモンドと朝顔の周囲の草刈りをしていた。
ノエル「ふぅ…。」
アーモンド「鎌の使い方もだいぶさまになってきたじゃない。土での生き方が板についてきたわね。」
ノエル「そ、そうかな?へへっ。それにしても凄いね。朝顔ってこんな風に伸びるんだ。」
支柱に絡まった朝顔を見るノエル。
アーモンド「植物を育てるためには土の状態を良くしておかないといけないわ。もちろんそれだけじゃないけどね。この草刈りも大事な作業の一つよ。草が土の栄養や水分を奪ってしまうからね。」
ノエル「ふーん…。」
アーモンド「植物だけじゃないわ。ノエルだって栄養と水分がないと育たないでしょ。そういえば…ノエル少し大きくなったんじゃない?」
ノエル「え?」
アーモンド「ほら、服が少し小さくなってるじゃない。」
ノエル「そうかな?」
アーモンド「はぁ…。伸びたといえば他にも…。」
キィ「おいしーー!」
レェ「おい!!キィの方が量多いぞ!」
ナッツ「文句あんなら自分でやれ!」
アップル「もーー!静かに食べれないの?!」
グゥ「玉ねぎってこんなに美味しいんですねぇ。感動ですぅ。」
ブゥ「こんなに美味しいの初めて食べたよ!」
レェ「おいキィ!お前の多いからちょっとよこせ!」
キィ「ん?なんか言った?ゲフッ。」
レェ「って、もう全部食ったのかよ!」
ナッツ「まったく。ちょっと前にベビーリーフの事で泣いてたのが嘘みたいだな。」
キィ「え?あたし泣いたっけ?」
ブゥ「泣いてたよ。覚えてないの?」
キィ「うーん…。記憶にない。」
レェ「めでてえやつ…。」
そこにアーモンドとノエルが帰ってくる。
ピィ「あら、ノエル、アーモンド、お帰り!草刈りお疲れ様!ちゃんと2人の分取ってあるわよ。」
アーモンド「あんた達その伸ばしたい放題の毛どうにかしなさいよ。スープに毛が入っちゃうじゃない。」
レェ「春になったら自然と抜け落ちるようになってんだよ。」
グゥ「とは言っても長靴の中暖かいですからちょっと暑いかもしれませんねぇ。」
アーモンド「ならとっとと切りなさい!小汚いわね!」
ブゥ「僕たち毛切った事ないんだけど…。」
レェ「切るで思い出した。西の葉っぱに住んでる切り屋のカマキリ知ってるか?『葉っぱ10枚からじゃないと切らねえよ』とか偉そうに言ってよ。」
キィ「いたねー。あたしあいつ嫌いだったー。」
アーモンド「もー。私が切ってやるから、そしたらさっさと持ち場につきなさい!」
キィ「はーい。」
アーモンド「アップルあんたのも切るわよ!」
アップル「えー!私は別にいいじゃない!オシャレしたいのに~。」
アーモンドに毛を切ってもらったピィ達。
川に映る自分達の姿を見つめる。
グゥ「さっぱりしましたねぇ。」
レェ「俺の毛なんか変じゃねえか?あいつ失敗したな。」
キィ「もともと変だったよ~。」
ピィ「あらノエル水やり?」
ノエル「うん。終わったらそのまま枝拾い始めるね。あ、そうだピィ。この靴返すね。ありがとう。」
ピィ「いいの?」
ノエル「アーモンドに余ってた靴貸してもらったから大丈夫。じゃあね。」
そう言うとノエルは川の水を汲み、朝顔の水やりに向かった。
グゥ「ノエルくん最近おとなしいですねぇ。」
レェ「そうか?」
ピィ「そういう時期なのかしらね。身長も伸びたみたいだし。」
ブゥ「そうだよね。服が小さくなったもん。」
キィ「靴も小さくなったんだろうね♪」
アップル「……。」
朝顔に水をやるノエル。
そこにアップルがやってくる。
アップル「水やり終わった?朝顔だいぶ伸びてきたわね。」
ノエル「アップル…もう枝拾い始めるの?」
アップル「ええそうよ。一緒に探しましょ。」
アップルはノエルと枝を探しながら話し始める。
アップル「ねぇ。なんかピィ達と距離置いてない?」
ノエル「距離オク?」
アップル「あ、えっと…わざと離れて行動してない?」
ノエル「そんな事ないよ。」
アップル「うそ。ピィから借りた靴だって突然返すなんて言ったり。なんか悩みとかあるなら言ってみなさい。優しいお姉さんが聞いてあげるから。」
ノエル「……太陽の妖精って長靴の中にはいないんだよね?」
アップル「えっ。い、いないわよ。言ったじゃない。」
ノエル「でも僕ちょっと前に……。あっ、枝だ。」
枝を見つけ拾うノエル。
するとアップルが。
アップル「あ、その枝もうボロボロよ。それじゃあ簡単に折れちゃうから使い物にならないわよ。」
ノエル「そうなの?」
アップル「他の枝と比べてみればわかるわよ。もう寿命なのよきっと。」
ノエル「寿命?」
アップル「その枝はもうお爺ちゃんなのよ。虫や小人と同じで、植物も命に終わりがあるの。少しでも長生きする為に、水と光を浴びさせるの。でも終わりは必ず来るの。……太陽の妖精の力があったって、終わりは来るのよ。」
ノエル「太陽の妖精がいても終わるの?」
アップル「太陽の妖精だって、何とかしてあげたいはずよ。少しでもベビーリーフの葉っぱを増やしてあげたいと思ってるわよ。でも太陽の妖精にだって、できない事はあるの…。」
グゥ「アップルさ~ん。ノエルく~ん。」
遠くからグゥがやって来る。
アップル「あ、グゥも今日枝拾いだっけ。」
グゥ「そうです。遅れてすみません。スープ飲みすぎてお腹が重たくて…ゲフ。」
アップル「よしちゃっちゃと拾いましょう。今日こそレェの記録破ってみせるわ!」
その日の夜遅くー。
ボロボロになった枝を見つめるノエル。
ノエル「お前…もう元気にならないの?」
そして隣で眠るピィを見る。
ノエル(もしピィ達が太陽の妖精なら、ベビーリーフに連れていけば葉っぱが増えるかもしれない。でも、太陽の妖精にだってできない事がある。でも、でも…、それでもピィ達を連れていけば僕は……きっと……。)
翌朝ー。
ピィ「ノエル。朝よ。起きなさい。」
ノエル「………はっ!え、朝?」
ピィ「そうよ。寝坊なんて珍しいわね。昨日いつ寝たの?」
ノエル「覚えてない…。…あ、朝顔に水やらなきゃ。」
ピィ「今日はもうキィがやってくれたわよ。それより早く起きて!良いものがあるわよ!」
ノエル「良いもの?」
小屋の外へ出るノエル。
ブゥ「あ、来た来た。おはようノエルくん。」
レェ「遅いぞ。」
キィ「じゃーん!見て見て!」
ピィ「どう?!これ!」
ピィ達の手には、一着のカラフルな服が。
ノエル「服…?どうしたの…それ…?」
キョトンとするノエル。
アーモンド「ピィ達の切った毛どうしようかと思ってね。ノエル背が伸びてきて服が小さくなったみたいだし、ピィの提案でお洋服作っちゃった。毛はちゃんと洗ってあるから大丈夫よ。」
キィ「このキラキラ綺麗な黄色はあたしの毛ね。」
レェ「このサラサラの赤い毛は俺のだ。」
ブゥ「僕も少しだけどアーモンドとナッツに教えてもらいながら一緒に作ってみたんだ。ちょっと失敗したけど。」
グゥ「僕がデザインしたんですけどどうですかねぇ?」
ナッツ「お前のデザインだったのか…。センスないな…。」
ノエル「………。」
ポカンとするノエル。
ピィ「どうしたの?嬉しくない?」
ナッツ「ダサいからなぁ。」
グゥ「ダ、ダサいですかぁ……。」
レェ「おい、俺のサラサラの毛のどこが気に入らないんだ!」
キィ「とりあえず着てみてよ!」
ブゥ「そ、そうだよ。暖かいよ。」
ノエル「ち、違う…。びっくりして…。その…。」
キャンディ『小人に売る服なんてねえけどな!葉っぱも持たない小人は黙って今の服で我慢しな。』
ノエル「あ、ありがとう…。」
安心したように笑うピィ達。
ピィ「泣かなくても良いじゃなーい。」
ナッツ「ダサい服着たくないんだろう。」
グゥ「………ぐすん。」
キィ「ねぇねぇ!早く着てみて!」
服を着るノエル。
アーモンド「ちょっと大きかったみたいね。後で直しておくわ。」
ナッツ「お前よくそんなダサいの着れるな。」
レェ「俺の毛はダサくねえぞ。」
ノエル「ふふっ。ありがとう。」
ノエル(ボネ、僕どうしたいのかわかったよ。自分の気持ちに気づいた。そしたらなんだかスッキリしたよ。)
第17話 プレゼント
おわり
コメント