マカロン 第14話 無力

絵本『マカロン』

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ノエル「むにゃむにゃ…。」

ノエルは夢を見ていた。

ボネ『ノエル!おかえり!どうしたの?こんなに沢山の葉っぱ…。』

ノエル『僕が作った葉っぱだよ!ベビーリーフの皆んなで分けよう!』

ボネ『本当?!凄い!これ全部ノエルが作ったの?!』

キャンディ『う、嘘だ!嘘つき小人にこんな葉っぱが作れるわけねえ!』

ノエル『キャンディにも葉っぱあげるよ。だからベビーリーフの皆、もっと仲良くしよう。』

キャンディ『ノエル…。』

アーモンド「ノエル!!!!」

ノエル「ふぇっ?」

アーモンド「いつまで寝てるの!早く起きなさい!足も治ったんだから、今日から働いてもらうわよ!」

ノエル「あ、あぁ…。夢か…。」

ベビーリーフまで届く朝顔を育てる事になったマカロン達。

ノエルは数日休んだおかげで足の怪我が完治した。
そして今日から始めて作業に参加する。

アーモンドが土に絵を描いてこれから行う作業を説明する。

アーモンド「こんな感じね。あとは朝顔を支える柱が欲しいわ。」

ピィ「柱ねぇ…。」

考えこむピィ達。

グゥ「木の枝じゃ代わりになりませんかねぇ?」

レェ「でかい木の枝なんて落ちてなかったよな。」

キィ「うん。長靴の中沢山歩き回ったけどなかったよ。」

グゥ「ノエルくんは何か良いアイデアありますか?」

ノエル「う~ん…。わかんない。」

ブゥ「あ、そうだ。木の枝を沢山繋ぎ合わせて長い棒にしたらどうかな?」

ブゥは土に絵を描いて説明する。

キィ「でもどうやってその棒立てるの?あたし達力もないし飛べないし。」

ブゥ「う~んと。棒を長靴の側面に立てかけながら、葉っぱに乗って枝を紐で結んで繋げていくのはどう?」

ピィ「なるほど!ナイスアイデアよブゥ!」

ブゥ「いやぁ…。」

照れ笑いするブゥ。

ピィ「じゃあ早速木の枝を拾うグループと繋げるグループに分かれましょ!」

アーモンド「私は普段の作業をさせてもらうわ。」

ピィ「わかったわ。じゃあ木の枝を拾うのは私とキィとレェとアップル。繋げるのはブゥとグゥとノエルね。あとは状況見ながらね。」

キィ「オッケー!」

二手に別れたピィ達。

枝をかき集めるグループは、長靴の入り口付近をあさる。

レェ「結構落ちてんな。」

キィ「この前ブゥが小道具作るために結構搔き集めたのにね。」

ピィ「外の天気が悪くて強風で飛ばされて長靴の中に入ってくるのかしら…。」

レェ「おい、さっきから大人しいな。指名手配犯。」

そう言ってアップルを見るレェ。

アップル「誰が指名手配犯ですって!」

その頃グゥ、ブゥ、ノエルはピィ達から少し離れた所で作業をしていた。

ブゥ「僕が小道具を作る為の枝がここに置いてあるから、ピィ達が集めて来るまでそれを繋げてよう。」

ブゥ達はアーモンド達から貰った紐を使って枝と枝を結ぶ。

グゥ「ん?ノエルくんどうしたんですか?」

ノエル「どうやって結ぶの?」

ブゥ「えっ?」

紐の結び方がわからないノエルに驚くブゥとグゥ。

グゥ「え~とこの蝶々結びのやり方ですか?」

ブゥ「グゥ、それ蝶々結びじゃないよ。」

ノエル「ん?蝶々結び?」

グゥ「…え~と。枝拾いの方が良かったですかね?」

ブゥ「ピィ達の所行こうか?」

グゥ達はノエルを連れてピィ達の所へ。

レェ「へ?!紐の結び方わからないのかよ?!」

キィ「えと、じゃあ誰かと交代する?」

アップル「あ、じゃあ私が結ぶ組に行くわ。」

また二手に別れるピィ達。

ピィ「ノエル靴履いてないから土の上じゃ痛いと思ったんだけどね。葉っぱの上と違っていろんな物が落ちてるし。私の靴貸すわ。」

ノエル「いいの?」

ピィ「良いわよ。私は毛があるし肉厚だから。」

嬉しそうにピィの靴を履くノエル。

しばらく作業が進みー。

キィ「ふーっ。結構集まったね!」

レェ「ほとんど俺が拾ったんだけどな!」

ノエル「ぜぇぜぇ…。つ、疲れた…。」

バテるノエル。

ピィ「ノエル疲れたでしょ?あなたが落ちてきた場所に雨水が溜まってる所があったはずだから、そこで水飲んできなさい。」

ノエル「うん。」

雨水が溜まってる所へ向かうノエル。
ノエルがいなくなった後、レェが切り出す。

レェ「あんなんで大丈夫かよあのガキ。」

キィ「何が?」

レェ「紐の結び方も知らねえし、体力もねえし。」

ピィ「それはさあ。葉っぱの端っこで細々生きてきたんだろうから知らない事も多いし体力もないしいろいろ経験がないのよ。昔の誰かさんと違って手抜いてるわけじゃないんだし良いじゃない。力や体力は徐々についてくるだろうし、もっと長い目で見てあげましょ。」

レェ「あ、あの時は先が見えないのに続けるのが無駄だと思ったんだよ!それより、あのガキ甘やかすなよ。ある程度は戦力になってもらわねえと困るぜ。今の状態じゃ役に立たねえよ。その割に飯は俺らより食うし、あいつができねえ分こっちに負担が来るんだよ。やってられねえよ。」

ピィ「能力に差はあるんだから、ある程度の事は諦めないと…。」

キィ「ご飯食べる量チェックしてたんだ…。」

レェ「これじゃあ真面目に働いてる方が損じゃねえか。できねえやつを甘やかして。」

ピィ「……。」

困った表情のピィ。

キィ「レェ枝拾いしてくれて頼もしいよ。力も体力も一番あるし。」

ピィ「そ、そうよ!」

ピィ達の会話を、戻ってきたノエルは聞いていた。

アーモンド「ご飯よー!!」

ピィ達の耳に、アーモンドの叫び声が聞こえる。

キィ「ご飯だ!!」

レェ「あー腹減った。」

ノエル「……。」

ピィ「アーモンドがご飯って呼んでるわ。行きましょ!」

するとー。

ノエル「僕お腹減ってないからいい…。」

ピィ「どうしたの?ダメよ。食べる時食べないと。」

ノエル「いいよ、いらない!」

ピィ「ノエル…。どうしたのよ。」

レェ「おい、行こうぜ。」

キィ「えっ。でも…。」

ピィはノエルが後ろを向いて涙を隠しているように見えた。

ピィ「じゃあ行ってるから…お腹減ったら来なさいよ。」

ノエルを置いてピィ達は去っていった。

ノエル(……。はぁ…。結局こうなのか…。)

ノエルを除いて集まるピィ達。
ピィ達の小屋の隣でアーモンドとナッツ達がじゃがいもを蒸していた。

ナッツ「あれ?あの小人は?」

アーモンド「あら?ノエルはどうしたの?」

ピィ「それが…。」

ピィ達から事情を聞くアーモンド達。

ナッツ「え!紐の結び方知らないの?」

ピィ「あの感じだと、戻ってきて私達の会話を聞いて気にしちゃったのかもしれないわ。」

レェ「あーもうめんどくせえな。放っておけよ。」

アーモンド「紐の結び方くらい教えてあげればいいじゃない。」

ブゥ「あ…、えっと…。どう教えたらいいかわからなくて…。」

グゥ「すみません…。」

アーモンド「あなた達だって誰かから何か教わった事あるでしょ。教わってない事に対して何でできないのって態度は良くないわよ。ただでさえ経験少なそうな子だし。」

ナッツ「ナッちゃん達が教えてやった事だってあるだろ。えへん。」

レェ「だからって紐の結び方知らないのはあんまりだろ。力も体力もないし。ありゃ一緒に仕事すんの大変だぞ。」

ピィ「……私心配だから行ってくるわ!」

ピィはじゃがいもを持ってノエルの所へ向かう。

ピィ「ノエル!」

ノエル「ピィ…。」

ノエルはピィ達が去った後も枝を拾い続けていた。

ピィ「ノエルこれ1人で拾ったの?」

ノエル「うん…。」

ピィ「ごめんね。私達の会話聞いて気にしちゃったんでしょ?」

ピィの言葉に、ノエルの目から涙が滲み出る。

ノエル「良いよ…。だって本当の事だもん…。僕力ないし、体力もないし、紐の結び方も何も知らない…。なのにご飯いっぱい食べてたし…。」

ピィ「ノエル…。」

ノエル「ベビーリーフにいた時と一緒だもん…。何もできなくて、役に立たなくて…。…見下されて…。馬鹿にされて…。」

ピィはノエルを抱きしめる。

ピィ「ノエル、分からないことがあったら教えてって言って!私達も誰かに何か教えたりとかあまりした事ないからうまくできるかわからないけど…。私達があなたを育てるから!」

ノエル「…育てる?」

ピィ「私達だって他の昆虫に比べたら力も体力もないし、羽があっても飛べないわ。でも私はベビーリーフにいた友達が何でもできる子で、生きていくのに役立つ事をいろいろ教えてくれたの。長靴の中に落ちてからはアーモンドやナッツが土や植物の事を教えてくれたわ。今度は私達があなたに教える番!」

ノエルの目を見て語るピィ。

ピィ「いい?ここはあなたが生きていく世界なんだから、まずはこの世界を知る事が大事よ。そしてそこで生きていくために必要な知識や技を身につけなさい。」

ノエル「えっと…。何言ってるかわからない…。」

ピィ「そうよね。とりあえず紐の結び方教えるから!それよりお腹減ってるでしょ!はいこれ。」

ノエル「じゃがいも…。」

ピィ「今日はバなんとかってやつで味つけしたらしいわよ!甘くて美味しいわよ!」

ノエル「バなんとか?ふふっ。変な名前。」

小さく微笑むノエル。

ピィ(ほっ。やっと笑ったわね。)

第14話 無力
おわり

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