◆前回のあらすじ◆
琴立を取り返したティコは町長の昔話を聞かされる。
ティコはコンフェイトで起きた事故で相棒を失った町長、両親を亡くしたロアンの為に、歌を歌う決意をする。そんなティコにロアンは少しだけ心を開き始める。
洞窟の坂道を進んでいくティコとロアン。
ロアン「扉だ。」
ティコ「う、うん。」
扉を発見。
静かに扉を開けるふたり。
僅かな隙間からのぞき込むと、暗い建物の中が見えた。
ティコ「ここは…?」
ロアン「おじさんの言う通りなら、恐らく町長の屋敷の地下だ。」
ティコ「ロアン道わかる?」
ロアン「いや…。私は下っ端の人間だから。屋敷の奥まで入ったことないんだ。」
辺りを見回しながら静かに進むふたり。
ティコ「何か聞こえる!」
ガンガンと遠くから聞こえる物音と叫び声に反応するティコ。
ロアン「何の音だ?」
ティコ「あっちの方から聞こえる。」
物音と叫び声の聞こえる方へ向かうふたり。
ロアン「あの扉からだ。」
扉に近づき耳を近づけるティコ。
プロキオン「出せーーー!!こっから出せーー!!」
ミュー「開けろゴルアアアアアアア!!!」
ティコ「プロキオンの声だ!」
ロアン「本当か?!」
ティコ「プロ…」
ロアン「しーーっ!でかい声出すな。見張りがいるかもしれない。」
ティコ「あ、そ…そうか…。」
扉を開けようとするロアン。
ロアン「ダメだ。鍵がかかってる。」
ティコ「そんな…。」
ロアン「鍵は町長の部屋か…?」
少し考え込んだロアンはティコに言う。
ロアン「私が町長の部屋に行って鍵を探してくる。ティコはその辺で隠れてろ。」
ティコ「えっ!そ、そんな危ないよ。」
ロアン「大丈夫。私一人なら見つかっても言い訳できる。ティコ…あんたが一緒の方が都合が悪い。」
ティコ「そ、そうかもしれないけど…。」
ロアン「じゃあ行ってくる。下手にうろうろするなよ。…もし私が戻って来なかったら、犬を置いて星の世界に帰りな。」
ティコ「戻って来なかったらって…。」
心配そうにロアンを見つめるティコ。
ロアン「いいな。ひとりで帰ったって、もう甘えてるとか言わないから。…それに…舞踊会出られなくなっちゃうだろ?」
ティコ「ロアン…。」
ロアンはティコの元を去っていった。
ティコ「…そんな事言わないでよ…。ロアンに歌聴いてもらえないじゃん…。」
ひとり町長の部屋へ向かうロアン。
ロアン(町長は恐らく崖から落ちた私たちを探し回っている。今がチャンスだ!)
一方、その頃星の界では、ミザールが放送をかけていた。
ミザール「えー天の川地区よりお知らせがあります。歌い手組のティコ君と、指揮者のプロキオン君が行方不明となっております。心当たりのある方は歌い手組ミザールまでお知らせくださいませ。」
放送を終え物思いにふけるミザール。
ミザール「は~~。なんだか今回の舞踊会は落ち着かないわね。こんなんで大丈夫かしら。あ、そうだ。ベガの琴立のアナウンスもしておこうかしら。……ベガ…。なんか変な感じするのよね。いつもならこんな放送だってベガがやっちゃいそうなのに。」
一方、地下道を走って行くロアン。その先に扉を発見。
ロアン「物音も話し声も聞こえない…。…よし。」
恐る恐る扉を開ける。
ロアン「誰もいない…。ここは書斎か…?」
扉は書斎へと繋がっていた。
ロアンの目に壁にかけてある写真が目に入る。
ロアン「これ…若い時の町長か…?今より痩せてるけど…。こっちは子供の頃か?ここは町長の部屋で合ってるのか?鍵…鍵を探さないと。」
周囲を見渡した後、ロアンは机の引き出しを次々あける。
ロアン「ない…。ない…。」
次の引き出しを開けると、沢山の鍵が見つかる。
ロアン「…あ、あった!この中にあるかわからないけど、とりあえず全部持っていくか。」
その時ー。
ガチャ。
町長「………ロアン…?」
ロアン「………!!!」
町長「なに……してるんだ………?」
ロアン「あ…いや……。」
ガシャン!
鍵を落としてしまうロアン。
ロアン「あっ…。」
町長「……………。」
その頃、ロアンの帰りを待つティコ。
ティコ「…結構時間たったよね…?いや…もうちょっと待ってみよう。う、ううん、また甘えてちゃだめだ。で、でもロアンの言った通り下手に動いたら迷惑かけるかもしれない…。」
その時ー。
町長「おーーーい!!どこにいる!!」
ティコ「!!!」
突然地下に響き渡る声にビクッとするティコ。
町長「どこかに隠れてるんだろう?!羽の生えた少年!」
ティコ「ちょ、ちょ、町長だ…。」
震えるティコ。
町長「おとなしくしてたら捕まえないから出ておいで!」
ティコ「じゃ、じゃあ何で網なんて持ってるんだよ…。」
近づいてくる町長との距離を広げようと、静かに移動するティコ。
町長「ロアンが待ってるぞー!いいのか?ロアンがどうなっても!」
ティコ「ロ、ロアン、町長に捕まったの…?い、いや罠かもしれない。でももし本当だったら…。」
その時ー。
ポローン♪
ティコが持っていた琴立の音が鳴ってしまう。
ティコ「あ!や、やばい!」
町長「ん?!そっちか?」
近づいてくる町長。
ティコ「ど、どうしよう…捕まる…。」
行き止まりで追いつめられるティコ。
町長「見ーーつけた!!」
ティコのいた場所に現れた町長。
しかしそこには誰もいなかった。
町長「あ、あれ…?誰もいない…。気のせいだったか…?はあ…。やっぱ疲れてるのかな…。ロアンの言った通り逃げ出しちゃったのか?」
肩を落とし、その場から去っていく町長。
その様子を天井から見るティコ。
そしてその後ろには…。
ベガ「ふう…。間一髪。危なかったわね。」
ティコ「ベ……ベガ…?」
第10話 間一髪
おわり
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