キィ「おかわりは早い者勝ちね。いただきます!」
全員「いただきま~す!」
アーモンド「あんた達やっとスプーンの使い方まともになってきたじゃない。」
ピィ「ふふん。成長したでしょ?」
ノエル「僕が作った器どう?ブゥに教えてもらったんだ。」
アップル「そうなの?味があって良いんじゃない?」
ブゥ「僕が作ったパンはどう?美味しい?」
レェ「まぁまぁ食えるじゃねえか。」
ピィ「それにしても、このじゃがいもなんだかぬめぬめしてるわね。」
ナッツ「それは里芋っていうんだ。」
ナッツ「美味しいでしょ?」
グゥ「美味しいです~。」
ノエル「こんな美味しいの始めて食べたよ。」
ピィ「ぶふっ!やだノエル。私達と同じ事言ってる。」
ノエル「え?あ、本当だ。あはは。」
いつもと変わらない朝食。
皆んなと楽しそうに笑うノエル。
そしてそんなノエルを見つめるアップル。
朝食後ー。
アップル「ノエル、朝顔に水やった後ずっと奥の方まで枝拾いに行ってみない?」
ノエル「うん。」
2人で枝を拾いに向かうノエルとアップル。
キィ「あれ?また2人で行ったの?」
グゥ「最近仲良いですねぇ。ノエルくんとアップルさん。」
ブゥ「アップル最初ノエルくんの事避けてたのにね。」
レェ「まさかできてんじゃねえのか?」
ピィ「ハハ!それならそれで良いじゃない。さぁ私も片付けたら枝拾いに行きましょ。」
長靴の奥まで2人で歩くノエルとアップル。
ノエル「ぜぇぜぇ…。」
アップル「あ、ごめん。ちょっと早足だったわ。」
ノエル「ううん大丈夫。…楽しみだな。支柱を完成させて、朝顔が育つの。」
アップル「ベビーリーフの皆んなに葉っぱを届けないとね。」
ノエル「うん…。」
アップル「ノエル最近変わったよね。なんかよく笑うようになったっていうか。」
ノエル「そう?へへっ。…僕こっちまで来るの初めて。」
アップル「そうなの?この長靴広いからね。」
ノエル「…なんか風を感じる。」
アップル「え?」
ノエル「あっちの方からだ。行ってみよう!」
アップル「ちょ、ちょっと待って!」
走っていくノエルを追いかけるアップル。
その先はアップルにとって見覚えのある景色だった。
ノエル「ねぇ!あそこ!穴が空いてる!」
アップル「あ!ここはね…。」
そこはレェとアーモンドが開けた穴だった。
ノエル「外だ…。外が見えるよ。」
アップル「これレェとアーモンドが開けた穴よ。外に出られても帰る手段がなかったから今に至るんだけどね。」
ノエル「…あの葉っぱはベビーリーフ?」
アップル「ん?多分そうよ。」
ベビーリーフを見つめるノエル。
ノエル「小さいな…。」
アップル「そうね。」
ノエル「僕はあんな小さな所にいたんだ。」
アップル「ピィ達も小さいって言ってたわ。」
ノエル「ねぇアップル。ベビーリーフにも終わりは来るんだよね?」
アップル「えっ?」
ノエル「植物には終わりがあるんでしょ?だからベビーリーフもいつかは終わるんだよね?それも多分もう長くないよね…?」
アップル「ど、どうしてそう思うの?」
ノエル「葉っぱの色とか…。あとなんだかカサカサして見える。この長靴の中にある葉っぱ達とは違う。」
ノエルの言葉に驚くアップル。
ノエル「…だからこそ、僕は太陽の妖精を捕まえなきゃいけない。」
アップル「で、でも…。」
ノエル「そう思ってた。でも、太陽の妖精を捕まえて、新しい葉っぱを手に入れたとしても、結局また同じ事の繰り返しなんだよね…?
僕が太陽の妖精を捕まえたかったのは、自分とボネと皆んなの為。それは嘘じゃないんだ。でも…。」
ノエルは俯いて少し恥ずかしそうに話す。
ノエル「僕はきっと太陽の妖精を捕まえて偉くなりたかったんだ…。そして皆んなに『凄いな。かっこいいな。良いな。羨ましいな。』って思われたかったんだ…。僕を虐めてバカにしてた皆んなより、ずっと上の人になりたかったんだ。僕の方が凄い、偉い、かっこいいって…。」
アップル「…ノエル…。」
ノエル「ピィ達が太陽の妖精かもしれないって思った時、『捕まえたい、偉い人になるチャンスだ』って思った。そして皆んなを助けて、僕は凄い人になるんだって。」
アップル「えっ?えっ?!待って!ピィ達が太陽の妖精って?」
ノエル「僕見たんだ。キィとグゥが葉っぱで寝てる時に光ってるのを。それに、ピィ達は葉っぱを成長させる力を持ってる。」
アップル「そ、それ見間違いじゃない?」
ノエル「見間違いじゃないよ。…でも、太陽の妖精がいても植物に終わりは来るんだったら、それじゃ僕は凄い人になれない…。そして『偽物を連れてきた』って言われて、また嘘つき扱いされる…。せっかく凄い人になれると思ったのに…。」
アップル「ノエル…。」
ノエル「こんな馬鹿な事ばかり考えるなんて、僕は…なんて悲しい生き物なんだろう…。」
ノエル「でもそれよりも、僕はやっぱりピィ達を捕まえたくない…。そんな勇気なかった…。
僕にいろんな事を教えてくれた…。いろんな世界を見せてくれた…。」
アップル「…ノエル!あのね…。」
アップルが切り出す。
アップル「私、本当は太陽の妖精なの。」
ノエル「え…?」
アップル「黙っててごめんね。ベビーリーフの事なんとかしてあげたいとは思ってたけど…。でも怖かったの。ベビーリーフのやつらに捕まりそうになった事があって、それでこの長靴の中に逃げ込んだの。ノエルが私を捕まえようとしたやつらの仲間だと思って、ベビーリーフに連れていかれたら酷い事されるんじゃないかって。」
ノエル「そ、そんな…。嘘だ…。」
アップル「…ごめんね。でも、私からしたらベビーリーフのやつらは自業自得だと思った。葉っぱの奪い合いをして自分達で食べる物も住む場所も小さくしちゃったんだもん。それで私を捕まえてどうにかしようだなんで勝手だわ。そんなやつら助けてなんてやりたくなかった。」
ノエル「…。」
アップル「でも、ピィ達やノエルと過ごしていくうちにベビーリーフの事なんとかしてあげたいと思った。だけど私を捕まえようとしたやつらは助けてあげたいと思えない…。何であいつらまで助けてあげなきゃいけないの?
…なんて事考えちゃった。…私って愚かな生き物なのかな?」
ノエル「おろかなって?」
アップル「あ、えっと…。」
アップル「私も…ノエルと同じ生き物みたい…。」
2人の会話を、後から来たピィは聞いていた。
その夜ー。
疲れて眠るピィ達。
そんな中、1人起きて支柱のある方へ向かうアップル。
アップル(今日見た感じだと、ベビーリーフの葉っぱは前に見た時より状態が悪かった。)
長靴の入り口にたどり着くアップル。
アップル「…ちょっとだけだからね。」
そう呟いてアップルは高く高く飛んだ。
長靴の外までー。空に向かってー。
アップル(少しだけ、少しだけでいいからベビーリーフを復活させて…。)
太陽の光を発し、祈るアップル。
その時ーー。
アップル「!!!!」
翌朝ー。
キィ「ね、ねぇ朝だよね?なんか暗くない?それともまだ夜?ぐぅ~。」
レェ「さ、さぁ…。でもお前の腹時計なってるから多分朝なのか?」
ブゥ「この星みたいな光…長靴の中に落ちた時みたい…。」
アーモンド「…アップルがいないわ!」
レェ「そうか、あいつがまだ寝てるからか!」
グゥ「いいえ。寝てるんじゃなくていないみたいですぅ。」
ノエル「……アップル…?」
アップルを探しに長靴の入り口の方へ走っていくノエル。
ピィ「ノエル待って!!」
ノエルを追いかけるピィ。
後に続こうとするレェ達。
レェ「おいちょっと待てよ!…いて!」
キィ「いた~い。ぶつからないでよ。」
グゥ「キィさんも僕の足踏んでますぅ~。」
ブゥ「暗いからあんま見えないよぅ。」
ノエルを追いかけて走っていくピィ達。
支柱までたどり着くと、そこには長靴の入り口から見える空を見上げるノエルがいた。
ピィ「はぁはぁ…。ノエル…。」
ノエル「空が…明るい…。」
レェ「なんだ?あいつ空に戻ったのか?」
グゥ「お散歩してるんじゃないですかねぇ?」
ブゥ「でも声聞こえないね。」
長靴の外に耳をすますブゥ。
ナッツ「帰ってくるよね?」
アーモンド「多分…。」
突然の出来事に呆然とする一同。
そんな中、昨日のノエルとアップルの会話を聞いていたピィは、何が起きたのか少しわかったような気がした。
ノエル「アップル……。」
哀しげな表情で空を見上げるノエルに、ピィはそっと寄り添った。
第18話 愚かな生き物
おわり
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